
両親が高齢で面倒を見ている方や、両親が不動産等資産をお持ちの方は、親に万が一のことがあったとき、実際にいくらくらい遺産としてもらえるのか、気になる方も多いでしょう。
しかし、ご両親とお金の事について、事前に話をしている方はそう多くはありません。
親としても、子供に自分の財産に期待してもらいたくないし、子供も親の資産を期待していると思われたくない方が多く、話し合いする機会が持てない方が多いためです。
この記事では、遺産相続の平均額や、遺産金額を予測する方法、遺産の分け方、相続税のかかるケースまで遺産相続に関して幅広く解説しています。
最後まで是非読んでみて下さい。
目次
1 遺産相続の平均は2,114万円
遺産相続の平均額は、2,114万円という※調査結果があります。男女平均に差があり、平均相続金額は男性が2,885万円、女性は1,301万円で、全体の平均金額が2,114万円となっています。
男性 | 女性 | 全体 | |
平均相続額 | 2,885万円 | 1,301万円 | 2,114万円 |
相続した金額の割合を見ると、最も多い割合は、
男性:1,000万円以上2,000万円未満(18.50%)
女性:500万円以上1,000万円未満(22.90%)
全体:500万円以上1,000万円未満(19.00%)
となっていました。
<相続した金額の割合>
男性 | 女性 | 全体 | |
100万円未満 | 9.10% | 9.00% | 9.00% |
100万円以上200万円未満 | 11.40% | 10.80% | 11.10% |
200万円以上300万円未満 | 7.90% | 8% | 8% |
300万円以上500万円未満 | 6.50% | 10.80% | 8.60% |
500万円以上1,000万円未満 | 15.20% | 22.90% | 19.00% |
1,000万円以上2,000万円未満 | 18.50% | 15.50% | 17.00% |
2,000万円以上3,000万円未満 | 8.50% | 9.30% | 8.90% |
3,000万円以上5,000万円未満 | 8.80% | 6.80% | 7.80% |
5,000万円以上1億円未満 | 7.90% | 5.00% | 6.50% |
1億円以上 | 6.20% | 1.90% | 4.10% |
※上記の調査は、全ての資産を(金融資産、不動産等)を現金換算した金額です。
また、相続経験者に「子どもにご自身の相続財産をどのくらい明らかにしていますか?」とアンケートを取ったところ、下記の通り半数以上の人が、財産を明らかにしていないようです。
「全く明かしていない」・・・52.5%
「すべての財産を明らかにしている」・・・13.6%
参照:遺言と相続に関する実態調査
親子間でもなかなか相続の話をするのは難しいようですが、受け取る側としては、概算ぐらいは知っておきたい人も多いでしょう。2章以降では予測方法について、解説していきます。
【※調査概要】
三菱UFJ信託銀行 プレスリリース(PRTIMES)
相続検討者(50歳~69歳の全国の男女)、相続経験者(30歳~59歳の全国の男女)計900名を対象に、インターネット調査を通じて「遺言と相続に関する実態調査」を実施。
実査委託先:楽天インサイト(2018年11月27日~2018年12月3日)
2 遺産全体の把握方法
遺産には、不動産、金融資産(預貯金、有価商品等)、家具、車両等が含まれますが、不動産、金融資産を把握すれば、大まかな全体の遺産額を把握できますので、確認方法を解説していきます。
2-1 不動産価格の調べ方
不動産評価の調べ方は、利用目的によって、下記の図の通り、評価方法が複数あります。遺産分割(相続財産を分ける事)する際には、実勢価格(今いくらでうれるか)を元に、遺産分けしていきますので、実勢価格の評価方法のみ確認しましょう。
(参考:実勢価格以外の評価方法)
実勢価格(今いくらで売れるか)を調べるには下記の方法があります。
(土地)
・不動産会社(町の不動産屋さん)で売却額を査定してもらう。
※注意事項:不動産会社によってはは営業の電話等、しつこく連絡が入る場合もあります。
・国土交通省の土地総合上場システムを利用する
(建物)
・不動産屋で売却額を査定してもう。
・建物の固定資産税表額を市・区役所で入手し、6で割り戻す。
(マンション)
・不動産屋で売却額を査定してもらう
・REINZ MARKET INFORMATION(成約価格を元にした不動産情報取引サイト)で調べる。
2-2 金融資産の調べ方
金融資産の調べ方(評価方法遺産に含まれる主な金融資産は、現金、預貯金、株式、投資信託、保険です。各金融資産の評価方法は次の通りです。
(現金)
相続開始日(なくなった日)の残高が評価額となります。
(上場株式)
相続開始日の終値(原則)
※相続開始月を含む、直近3カ月間の終値平均で最も低い価格を選択可能
(投資信託)
相続開始日の評価額から、解約した場合の税金(儲かった利益の20%)と解約手数料(信託財産留保額)を差し引いた金額
(保険)
死亡保険金の金額
評価方法は上記の通りですが、遺産を受け取る側からすると、両親に聞いてみないと、把握しようがありません。両親に聞くことができない場合は、推測するしかありません。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」によると、70歳以上の金融資産の平均値は1,780万円、中央値は700万円です。金融資産はこのようなデータで推測すると良いでしょう。
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査] (2018年)
※1)ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧日本郵政公社)、銀行、その他の金融機関への預貯金、生命保険及び積立型生命保険などの掛金、株式・債券・投資信託・金銭信託などの有価証券と社内預金などの金融機関外への貯蓄の合計
2-3 その他遺産に含まれるもの
預貯金や金融商品、不動産以外にも、自動車、家財道具、美術品、骨董品、ゴルフ会員権等も含まれます。
これらの評価方法は実際の売却価格や査定価格で評価されます。
3 一般的な遺産の分け方
3-1 法定相続分で分ける
遺言書がない場合には、相続人が話し合って自由に分け方を決めてよいのですが、民法では一つの基準として、法定相続人の相続分※について次のように定めています。
※法定相続分(ほうていそうぞくぶん)とは 被相続人(遺産を残して亡くなった人)の財産を相続する場合にあたり、各相続人の取り分として法律上定められた割合をいいます。 |
民法の基準に基づいて分ける場合の相続分は下記の表の通りです。
【事例】 遺産相続額が6,000万円の場合
①配偶者とその子どもが相続人の場合
配偶者—– 1/2 (3,000万円)
子ども—– 1/2 (3,000万円)
※子どもが2人いる場合は、1/2×1/2=1/4
(1人1あたり1,500万円)
②被相続人の配偶者とその親が相続人の場合
配偶者—– 2/3 (4,000万)
親 —– 1/3 (2,000万)
※親が父母ともに生きている場合は1/3を平等に分ける
1/3×1/2=1/6 (1人あたり1,000万円)
③被相続人の配偶者とその兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者 —– 3/4 (4,500万)
兄弟姉妹—– 1/4 (1,500万)
※兄弟姉妹が2人の場合は、1/4を平等に分ける。
1/4×1/2 = 1/8 (1人あたり750万円)
法定相続分はあくまでも目安なので、実際には、遺産分割協議で、相続分を決めていく事が多いです。
3-2 遺産分割協議で分ける
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いのことですが、その話し合いで決まった内容を書面におこしたものが、【遺産分割協議書】とよばれるものになります。
基本的には、遺産は、相続人で話し合って自由に分ける事ができます。相続人の間で合意ができるならば法定相続分を無視しても問題ありません。
例えば、相続人が、配偶者と子供の場合は、法定相続分では、1/2に分ける事になりますが、配偶者が遺産の全てを引き継ぐ事に子供が同意すれば、配偶者が全ての財産を引き継ぐ事ができます。
3-3 遺言書に基づいて分ける
遺言書があった場合、その遺言の内容に基づいて遺産分割されます。
遺言書で指定された相続人(受け取る方)は、遺産分割協議をせず、他の相続人に同意を求めることなく、相続手続きを進めることができます。
しかし、相続人全員が遺言の内容に反対する場合は、これに束縛される必要はなく、相続人の間で協議を行い、相続人全員が納得のいく遺産分割を行うことができます。
また、遺留分(※)を侵害する内容の遺言もできる為、遺留分を侵害する内容で遺産分割が行われてしまうこともあります。
その場合、せっかく遺留分があっても、受取人は遺産を受け取れなくなってしまうので、自分に遺留分があることがわかったら、できるだけ早く遺留分の請求をしましょう。
※遺留分とは |
(遺留分の一覧)
4 相続税がかかるケース
一定額以上の遺産がある場合は相続税がかかります。そこで重要となるのが相続税の基礎控除です。基礎控除の金額を超えた場合は、相続税がかかりますので、この章では基礎控除について解説しています。
また、配偶者には特別優遇措置がありますので、確認しておきましょう。
4-1 相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除とは、遺産の一定金額までは相続税がかからない、ボーダーラインのことです。
その一定金額は、下記算式で計算を行います。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数※) |
※法定相続人とは民法で決められている、相続する資格がある人のこと。
例えば、法定相続人が2人だった場合は、
基礎控除は、
4,200万【3,000万+(600万×2人)】
となるため、遺産が4,200万円を超える場合は相続税がかかりますが、4,200万円以内であれば相続税はかかりません。
4-2 配偶者控除
配偶者控除とは、配偶者が遺産を受け取った場合に、配偶者のみに優遇されている税制です。
具体的には、受け取った遺産が1億6千万円以内であれば、相続税はかかりません。
また、受け取る遺産金額が、1億6千万を超えるケースでも、遺産総額の1/2以内であれば、相続税はかかりません。
例えば、遺産総額が5,000万円で、配偶者、子供2人のケースで法定相続分通り(母1/2、子供4/1×2人)受け取った場合、下記の計算の通り、20万円相続税がかかります。
配偶者が受け取る遺産は、2,500万の場合、本来負担する税金は10万円ですが、受取財産が1億6千万以内のため、相続税はゼロとなります。
(5,000万円―4,800万(基礎控除額))×10%(相続税率)=20万円
基礎控除の範囲内の場合は、相続税の税務申告は必要ありませんが、配偶者控除を使う場合は、必ず相続税の税務申告が必要ですのですので要注意です。
4-3 相続税早見表
おおよその相続税額(受取人全員分の税金の総額)が知りたい方は下記の相続税早見表を確認してみて下さい。簡単に相続税の概算額を知ることができます。
■相続人(受け取る人)に配偶者が含まれる場合
■相続人が子供だけの場合
まとめ
遺産相続について解説してきましたが、遺産相続で悩む方は下記のような方が多いでしょう。
・自身の将来の資産に不安を抱えていて、相続資金を期待している
・相続税がかかるかが心配
・兄弟姉妹で遺産相続でもめないか
このような、遺産相続に関する悩みをお持ちの方で、自身で解決できない場合は、一度専門家の相談してみるのも良いかもしれません。
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