遺留分の支払いは現金が必要に!正しく理解して揉めない遺言書を作ろう!

遺留分の支払いは現金が必要に!正しく理解して揉めない遺言書を作ろう!

遺言書を書く際に、

「遺留分に注意して書く必要があるのか?」
「遺留分にふれてしまうと無効になってしまう?」
「遺留分とはどういう制度なのかわからないない」

など、悩みを持たれている方も多いのはないでしょうか。

遺言の内容にかかわらず、遺留分とは、

『相続人(財産を受け取る人)に法律上保障された、最低限もらえる財産の持ち分のこと』

相続人(財産を受け取る人)とは配偶者又は子(※場合によっては直系尊属)に限られます。

また、遺留分が問題となるケースは遺言書がある場合です。
※遺言が無い場合は、法定相続分(下記図参照)か話し合い(遺産分割協議)で遺産を分けるため、遺留分の問題が発生しません。

法定相続の順位と相続分

そのため、遺言書を遺す場合は、遺留分を正しく理解して、書くこと、また、その後起こりうるトラブルも予測して書く必要があります。

この記事では、遺留分に気を付けて遺言書を書くポイントから、知らないと損する遺留分対策方法注意事項まで詳しく書いています。

最後まで読んでみてください。

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目次

遺留分を無視した遺言書を書いても、無効にはならない

遺留分は先に書いた通り、相続人(財産を受け取る人)が最低限の財産をもらえる持ち分の事です。

しかし、遺留分を無視して書かれた遺言でも無効になるわけではありません。

これは民法で、遺言によって残す側は、相続人(財産を受け取る人)の財産を渡す割合を自由に決定することを認められているためです。(民法902条1項)

例えば、下記のような、3人家族の場合を見てみましょう。
奥さん、子供ともに、遺留分(相続財産を最低限もらえる権利は)は1/4あります。亡くなった夫が、仮に、愛人にすべての財産を残すというような遺言があっても、その遺言書自体は無効になりません。

遺留分の図

ただし、遺留分をもらえなかった人は、遺留分の限度額まで財産の返還を請求することできます(これを「遺留分減殺請求」と言います)。

遺言書自体は無効にはなりませんが、後日本当に渡したい人が遺留分を請求されて困ってしまうという事態は起こるかもしれません。

これを防ぐためにはまず、遺留分を正しく理解する必要があります。そして、後日財産を渡したい人が、他の相続人に請求されたときの対策を打っておく必要があります。

2章以降では、遺留分や、対策について、詳しく解説してきます。

遺留分とは遺言書の内容に関わらず、相続人に保証されている最低限、相続できる権利

遺留分については、前章で簡単に説明しましたが、この章では下記2点ついて詳しく解説していきます。

・家族構成別、遺留分の割合
・遺留分の権利がある人、

遺留分について詳しく理解することで、遺言書を書く際の注意事項や対策方法がわかるようになります。詳細を確認していきましょう。

遺留分を請求できる人とその割合

遺留分を請求できる相続人とその割合は下記の通りです。
遺留分は法定相続分の半分で、配偶者、子、直剣尊属(父・母等)のみ権利があります。

相続人の組み合わせそれぞれの遺留分
配偶者と子配偶者:1/4
子:1/4(複数いる場合は均等割)
子のみ子:1/2(複数いる場合は均等割)
配偶者のみ配偶者:1/2
配偶者と直系尊属(※)配偶者:1/3
直系尊属:1/6(複数いる場合は均等割)
直系尊属のみ直系尊属:1/3(複数いる場合は均等割)
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹:なし

※直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のこと。

例えば、下記の4人家族のケースで夫が亡くなった場合、遺留分が請求できる権利とその割合は、妻(1/4)、長男(1/4)、長女(1/4)です。

相続財産が4,000万円あるとしたら、遺留分の金額は下記の通りです。
・妻 1,000万円
・長男 500万円
・長女 500万円

遺留分の図

遺言書を書く際は、書いた後誰に遺留分があるか確認してから書くと良いでしょう

兄弟姉妹には遺留分の権利はない

上記の図の通り、兄弟姉妹には、遺留分がありません。

遺留分の権利が兄弟姉妹に認められてないことは民法第1042条で決められています。

例えば、下記の赤い印の通り、子供がいない夫婦で、夫が無くなり、兄弟姉妹が(※)法定相続人になる場合でも、兄弟姉妹に遺留分はありません。

※法定相続人とは
民法で定められた相続人のこと
遺留分の図

遺留分が請求される可能性がある遺言書の事例、されない事例

この章では、遺留分が請求される可能性がある代表的な例を解説しています。各事例と対策方法を確認しましょう。

前妻に子供がいるケース(遺留分が請求される可能性ある事例)

前妻に子供がいるケースでは、遺言書の内容によっていは、遺留分を請求されます。

前妻の子供にも相続権があるためです。

下記の事例は、前妻との間に子供が1人いて、現妻との間にも子供が1人いて、夫が亡くなったケースです。遺言書には、「現妻に全財産を相続させる」という遺言書の内容でした。
この場合、遺留分は、前妻の子供に1/8現妻の子供1/8あります。

遺留分の図


仮に、亡くなった夫が書いた遺言書の想いとして、前の妻との子供としばらく会っていない、又は、生前に十分な養育費を払っていて、現在の家族に多くの財産を残したいと考えて書いたとします。
そのような場合でも、前妻との間の子供に遺留分を請求される可能性があるので対策が必要です。

対策としては、保険や付言事項が有効な遺留分対策となるでしょう。詳しくは4章で説明します。

子供2人のうち、1人に残したいケース(遺留分が請求される可能性がある事例)

下記の事例は、妻が先に亡くなり、父親が長男・次男のうち「長男に全財産を相続させる」という遺言書を作成していたケースです。

この場合は、長男に財産を相続させた場合、長男は、次男から遺留分1/4(法定相続分1/2の半分)を請求される可能性があります。

遺留分の図

長男に少しでも多く残したい場合は、4章で解説する、生命保険や、養子縁組、付言事項の活用が遺留分対策として有効です。

子供がいない家庭で、兄弟姉妹に残したくないケース(請求されない事例)

下記の事例は、亡くなった夫(被相続人)は、両親は、先に亡くなっており、親族は、妻と、兄弟のみで、「妻に全財産を相続させる」という遺言書を作成していたケースです。

子の場合は、2章で解説した通り、兄弟姉妹に遺留分はないので遺留分を心配する必要はありません。

遺留分の図

このようなケースでは、遺言書が無い場合に問題が起きるケースが多いです。遺言書が無かった場合、法定相続割合が兄弟姉妹に1/4あるため、遺産分割で揉める可能性があります。

子供がいない夫婦は、遺留分対策は必要ありませんが、揉めない相続にするためにも、遺言書を書くことをお勧めします。

遺留分対策、3つの方法

遺言書の付言事項で遺留分対策する方法

付言事項での遺留分対策も有効です。
付言事項とは、遺言書に法的な効力はありませんが、家族への想い等、言い残したいことを遺言書に書く事です。

例えば遺言書に

「○○(遺留分権利者:次男等)には生前贈与をおこなったので、○○(遺留分権利者)に長男の○○には遺留分減殺請求をしないでほしい。」

等記載しておけば、遺留分権利者の納得が得られる可能性があり、死後の紛争防止に役立つことがあります。

このように、想いが伝わる付言事項を書くことで、遺留分権利者が納得すれば遺留分対策になります。

できるだけ、付言事項は書いた方が良いでしょう。

生命保険で遺留分対策する方法

生命保険を活用することで、遺留分を減らす対策が可能です。

保険は保険契約者が亡くなった後は、保険受取人の財産となるため、遺産分割の対象となりません。生命保険の活用は相続においてとても有効です。
(預貯金や不動産等をそのまま相続する場合は、遺産分割の対象となってしまいます。)

たとえば、預貯金500万円で500万円の生命保険に加入した場合、保険金は遺留分侵害額請求の対象外になります。

■生命保険を相続に利用する際の注意点
預貯金を生命保険金という形で相続させる、“裏ワザ”とも言えるこの方法ですが、生命保険での相続は、資産の半分程度にしておきましょう。


過去、以下のような裁判の判決がありました。
「資産のすべてを生命保険での相続としたため、生命保険金の受取人と他の相続人との間に著しい不公平が生じた。」
として、例外的に生命保険金を相続財産と取り扱うこととした事例がありました。

養子縁組を利用する

遺留分対策として養子縁組を利用することも有効です。

養子縁組を行うと、養子は遺留分の権利を取得できるため、1人あたりの遺留分を減らすことができます。

■通常の相続(養子縁組を利用しない)の場合
亡くなった被相続人に2人の子供がいた場合、遺留分は下記の図の通りです。

(養子縁組前の遺留分)
長男:1/4
次男:1/4

遺留分の図

■養子縁組を利用した場合
長男の妻を養子縁組にすると遺留分は下記の通りとなります。長男の妻を養子縁組にすることにより、次男の遺留分を減らすことが可能です。(長男夫婦に多く資産を残したい場合に有効。)

(養子縁組後の遺留分)
長男:1/6(養子縁組前 1/4)
次男:1/6(養子縁組前 1/4)
長男妻:1/6(養子縁組前 ゼロ)

遺留分の図

遺留分対策としては有効ですが、一度養子縁組をすると、撤回するのが非常に難しいです。行う際は、長男夫婦が離婚等の心配がないか等、充分に検討して利用する事をお勧めします。

遺留分に関する4つの注意事項

遺留分は原則として現金で支払わなければならない

遺留分は原則として、現金で支払う必要があります。

2018年に民法が改正され、2019年7月1日以降に起きた相続については、遺留分は基本的に現金で支払うこととなりました。

例えば、相続財産が現金が無く、家しかない場合は、家を売って現金で支払うことになります。

このような、相続財産が不動産しかないケースでは、現金を用意するために、4章でも解説した、保険の活用が有効です。

遺留分が請求できる期間は、相続開始を知った日から1年以内、又は、相続開始時から10年

遺留分を請求できる期間は2つあります。

①相続が開始される日(財産を残す人が亡くなった日)を知った時から1年以内
②相続開始時から10年

民法1042条で下記の通り定められています。
(減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも,同様とする。)

相続開始前の1年以内の生前贈与は遺留分の計算にふくまれる

相続開始前の一年以内に贈与された財産以外の財産も遺留分侵害額請求の対象となります。
(民法1044条で定められています。)

また、生前贈与が特別受益(相続人の中に、特別に被相続人(亡くなった人)から利益を得ていた人がいる場合の、その受けた利益のこと)にあたる場合には、10年以内に贈与された財産は原則として、遺留分の対象となります。

遺留分対策として、生前に贈与を利用する方がいらっしゃいます。しかし、10年以内の生前贈与は遺留分対策としては有効な手段ではありません

遺言執行者は相続人全員に財産の通知義務あり

遺言執行者※(遺言通りに財産分けを進めていく人)は、相続人全員(配偶者、子、兄弟姉妹、父母等)に財産目録を通知する義務があります。

民法第1011条で定められており、相続人全員に連絡をしないことは、法律に抵触することになります。


遺言執行者が遺言書で指定されている場合は、指定された人が手続きを進めていきます。しかし、遺言に執行者が書かれていない場合は、家庭裁判所で遺言執行者選任しの手続きが必要です。

例えば、遺留分の権利を持つ人に、相続財産がばれないように、意図的に通知しない場合は、法的に問題となります。

まとめ

遺言書の書く際に、遺留分に関する注意事項や対策方法を開設してきましたが、遺留分対策まで考えて、遺言書を書くことが大切です。
これから遺言書を書く方は、遺留分対策まで考えて書くことをお勧めします。

また、自分で遺言書を書こうと思っている方は、法的に不備があると、無効になってしまいますので、法的に不備の無い遺言書を書きましょう。

下記の記事は、遺言書について、詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

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