【見本付】正しい遺言書の書き方と保管方法|見ながら書けば大丈夫!
遺言書をいざ書こうと思ったものの、
「どうやって書いたらいいの?」
「書いた後、どう保管すればいいの?」
と悩まれる方も多いと思います。
遺言書の種類には、3つの種類がありますが、今回は、自分で書く『自筆証書遺言』について詳しく、サンプルをみながら、書き方を詳しく解説しています。(遺言書の種類に関しては第5章で紹介します。)
また、民法改正により、法務局が遺言書を預かるサービスが開始します。
これにより、自筆証書遺言の問題点(見つからない、見つけた人が改ざんする等)がなくなり、自筆証書が遺産を残したい人に確実に遺(のこ)すための、より有効な手段となりました。
この記事では、民法改正を踏まえた、遺言書の書き方から、子供がいない夫婦や、前妻に子供がいるケース等、特に、遺言書を書くべき人の事例まで詳しく解説していますので、最後まで読んでみてください。
遺言書のサンプルと書き方
遺言書をいざ書こうと思っても、ほとんどの人が実物を見たことがないと思います。
見たことが無い方は、サンプルを見ながら、書き方を確認していく方がお勧めですので、まずはサンプルをみてみましょう。
まずは遺言書のサンプルを確認しよう
遺言書の基本的なサンプルは法務省のサイトに掲載されています。
自分で遺言を書く場合(自筆証書遺言)は、まずは下記法務省のサイトにアクセスして、サンプルをダウンロードされると良いと思います。
また、以下は、上記サンプルを元に専門家(司法書士)が作成した別のサンプルになります。こちらもご参考ください。
(監修:福岡ひかり司法書士法人)
遺言書の書き方
遺言書を書く際に必要なものが各種あります。全て揃えた上で書き始めましょう。
【用意するもの】 ・丈夫な用紙、筆記具(文字が消えないボールペンなど)、印鑑(実印が良い)、朱肉 ・印鑑登録証明書(実印が間違いないか確認) ・戸籍謄本(相続人の名前を絶対に書き間違えないようにするため)、 ・登記事項証明書・登記簿謄本(不動産がある場合) ・封筒 |
遺言書に書く内容は次の通りです。
【遺言書に書く内容】 ・タイトル(遺言書) ・相続人の名前と生年月日(財産を受け取る人) ・遺言執行者 ・※財産目録(登記簿の通りに記載) ・被相続人(財産を遺す人)の署名と捺印※注 財産目録については、すべての財産を妻に残すような場合は、必要がないケースもあります。ただし、財産目録が無いと、すべての財産を把握するために、受け取る人が調べる必要がでてくるため、財産目録を作成する事をお勧めします。 |
【遺言書の基本ルール】
・タイトルは「遺言書」とします。
・全文自筆で書きます。(遺言、財産目録※一部パソコン等にて可能)
・法定相続人に相続させる場合は、「相続させる。」と書きます。法定相続人以外に相続させる場合は「遺贈する。」と書きます。
・正確な日付を記入します。
・自筆で署名・押印をします。なお、認印でも法的には問題ありませんが、トラブル防止のために実印で押印しましょう。印鑑登録証明書を取り寄せ、実印で間違いないか確認しましょう。
・自筆証書遺言を封入・封印し、保管します。
以上が遺言書の書き方となります。前章でお伝えしたサンプルを参考にしながら書いてみてください。
遺言書が無効になってしまう5つの原因
遺言書は書き方を間違えると無効になってしまいます。間違いが多い事例は次の通りです。
全文が自筆で書かれていない
パソコン等での作成や、録音・録画による遺言は直ちに無効になります。
(目録はパソコン等での作成が可能です。)
押印が抜けている
本文中の押印漏れについても無効になってしまいます。
ただし、変更等の場合でなければ封筒の綴じ目の押印がある場合に限り、遺言自体が無効にならずに済むケースもあります。
作成日付が特定できない
作成日付が特定できない場合、無効となります。
○年○月吉日といった、日付をぼかす表現は避けましょう。
ただし、明らかにこの日であると分かるような表現であれば有効と認められる場合もあります。(例:遺言者満○歳の誕生日など)
そもそも遺言能力がなかった
認知症の方や15歳未満の人は、有効な遺言書を作成することができません。(仮に法定代理人の同意があっても、満15歳未満の人は遺言ができません。)
成年被後見人の場合は、事理を弁識する能力(物事を理解し、自ら判断、意志表示できる能力)を一時回復した時に2名以上の医師の立ち会いの下であれば、単独で遺言を遺すことが可能となります(民法973条1項)
2人以上の共同遺言
たとえ夫婦であっても、一通の遺言書に複数人の遺言を書くことは認められません。それぞれ別々の遺言書として書き残しておく必要があります。
上記の内容以外にも、書き方の間違いで遺言が無効になるケースがあります。心配な方は、専門家に相談することをお勧めします。
詳しくは、以下の記事を参照ください。
遺言書を書くべき人と、それぞれの書き方のポイント
子供がいない夫婦で両親・兄弟がいる方
子供がいない夫婦で、配偶者に全財産を残したい方は、遺言書を作ることをお勧めします。
遺言書がないと、基本的には法定相続割合で資産を分けることになります。
例えば、両親が健在な場合は、法定相続分は、配偶者が2/3、義父母が1/3で分けることになります。
両親が亡くなっていて、兄弟姉妹が健在な場合は、その法定相続分は、
配偶者が3/4
兄弟姉妹等が1/4
となります。
このように、夫婦の一方が亡くなった時は、残された夫婦の一方とともに、義父母や兄弟等が相続人になり、協議が必要となりますので、確実に配偶者に残したい方は遺言書を作成しましょう。
*遺言書の書き方のポイントと対策!*
夫婦それぞれで、全財産を配偶者に残す遺言書で基本的に問題ないでしょう。
注意点として、ご両親が健在な場合は、遺留分(相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産)が1/6ありますので、全財産の1/6を払えるように、現金や保険で準備しておくことが大事です。
前妻に子供がいるケース
夫に離婚歴があり、前妻との間に子どもがいるようなケースは、遺言書を作っておくことをお勧めします。
夫が遺言書を残していなければ、前妻の子も含めて、基本的には、法定相続割合で分け合うことになります。
また、遺産分割協議をするときには、前妻の子にも知らせなければなりません。その上で、前妻の子も含めた相続人全員で、遺産の分け方を話し合って決める必要があります。
例えば、前妻に子供1人、後妻に子供が一人の場合、
法定相続分は後妻が1/2
後妻の子供1/4
前妻の子供1/4
となります。
後妻と後妻になるべく多く資産を残したい方は、遺言書を作成することをお勧めします。遺留分に注意する必要が5章で詳しく解説してますので、参考までに読んでみてください。
*遺言書の書き方のポイントと対策!*
後妻の妻と子供に残す内容で問題ありませんが、遺留分対策が必要となります。
遺留分対策としては、生前贈与や、保険活用が有効ですが、こちらについては、専門家の意見を聞くことをお勧めします。
内縁関係にある方がいる場合
内縁の妻がいる方にも遺言書を作ることをお勧めします。婚姻届を出していない者どうしは、法律上、夫婦とはならずに、相続権がないからです。
例えば、再婚の者どうしの場合には、お互い籍をいれるまでしばらく様子をみようということもあるかもしれません。そのような場合、法律上の夫婦ではないことから、相手方がなくなった場合、一切相続権はありません。
内縁の妻に、財産を残してあげたい場合は、遺言書を残し、分けるものを明白にしておくとよいでしょう。
*遺言書の書き方のポイントと対策*
同居している家、生活費のことを考えて、遺言や保険、生前贈与などを検討すると良いです。
他に相続人がいる場合、遺留分の計算が必要になる可能性もあり、保険についても加入条件などの検討が必要になるため、専門家の意見を聞くことをお勧めします。
兄弟姉妹のみが相続人の場合
ご自身に配偶者や子供がおらず、両親もすでに他界されているような場合には、遺言書を作っておくことをお勧めします。
相続人が兄弟姉妹の場合には、その兄弟姉妹は高齢で、なかなか自由が利かないことが多いです。中には亡くなっている場合もあります。その場合、甥や姪が相続人となるケースが増えてくるからです。
このような場合、甥や姪との関係が希薄だったり、ほとんどなかったりして遺産がそんなにたくさんなくても、遺産分割において揉めるケースも多いです。このような“争続(争いのある相続)”を避けるには遺言が有効です。
例えば、ずっと姉が妹の面倒を見てきて、妹が亡くなり、常識的に考えれば、姉に取り分を多くして相続すべきだと思っても、反対する相続人が1人いれば、そのような相続はできません。
このように、残したい兄弟が決まっていれば、事前に遺言書を作っておくことをお勧めします。
*遺言書の書き方のポイントと対策*
相続人が兄弟姉妹のみ、または相続人がいない方は、自由に遺言書が作成できます。
・甥や姪、親族でなくともお世話になった人に渡したい
・ペットのために使いたい
・社会貢献のために寄付したい
など
その場合、遺言執行者が必要になりますので、専門家への依頼をすることをお勧めします。
不動産(賃貸物件、収益物件)を複数持っている場合
投資用の不動産を複数お持ちの方は、遺言書を作っておくことをお勧めします。
このような場合、土地建物の評価も必要となり、物件によって、評価も収益性も異なるため、遺産分割が複雑で、時間がかかるケースが多いからです。
相続手続きに時間がかかり、手元に納税資金がなければ、これらの不動産を売らないといけないケースもあります。
例えば、不動産物件が2件あり、相続人が子供2人の場合、新しい方や収益性の高い方をもらいたい等、遺産分割でトラブルになる可能性があります。また、共有名義で遺産分割すると、後々売買するときにトラブルの元になります。
このように、不動産を複数お持ちの方は、遺言書を作っておくことをお勧めします。
*遺言書の書き方のポイントと対策*
相続税はかかるのか、かかる場合はどの程度の納税資金が必要か、遺留分の計算、財産の評価など、事前に調べておくものが多々あります。
納税資金については、遺言だけでは解決できない場合もあります。生前に売却する方法や、保険の活用など対策が必要になるケースもあります。
総合的に判断する必要があるので、相続の専門家に相談することをお勧めします。
知っておきたい遺言に関わる「民法大改正」
遺言書預かりサービスの開始
2020年7月10日から法務局にて、遺言書を預かるサービス(自筆証書遺言書保管制度)が始まります。
今までは、自筆証書遺言は
「遺言書がみつからない」
「遺言書廃棄及び改ざんされる」
のような問題がありましたが、このサービスを利用する事によりその心配は無くなりました。
自筆証書遺言を書かれる方は、このサービスの利用を強くお勧めします。
財産目録の作成がパソコン等で可能
自筆遺言証書とセットになる、被相続人の財産内容を記録した目録(財産目録)のみ手書きでなくても良いことになりました。自宅のパソコン等で簡単に作ることができます。
ただし、遺言書の本文に関しては今までと同じように手書きでなくてはいけませんので注意してください。
遺留分は現金で支払う準備が必要
民法改正後、遺留分侵害請求分は現金で支払わなくてはならなくなりました。
■遺留分侵害額請求とは 相続人(財産を受け取る側)が、本来もらえるはずの遺産が遺留分より少なかった時、不足している遺留分を請求できる権利のこと。(遺留分侵害請求権) |
遺留分を侵害するような遺言書を書く場合は、遺留分対策が必要です。
対策については、以下の記事に詳しく書いていますので、参考までに読んでみてください
遺言書の種類
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、これまでにご紹介してきた遺言のことです。遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自筆し、押印して作成する形式となります。
自筆証書遺言は特別な手続きをする必要がないため、いつでもどこでも作成することができます。
相続発生後見つけた人は、遺言書を勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を行う必要があります。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、2人以上の証人の立会いのもと、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成する形式の遺言書のことです。
公正証書遺言を作成するには遺言者本人であることを証明するための実印と印鑑証明書を用意し、2人以上の証人と一緒に公証役場に行きます。そして、公証人に遺言の内容を伝え、遺言書を作成してもらいます。
遺言者が亡くなったら最寄りの公証役場に行き、遺言書の内容を確認し、相続手続きをおこないます。
公正証書がお勧めの人については、以下記事に詳しく書いていますので、参考までに読んでみてください。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が作成した遺言を2人以上の証人と一緒に公証役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらう形式の遺言書です。
秘密証書遺言は、署名と押印だけ遺言者がおこなえば、遺言書をパソコンで作成したり、代筆してもらったりしても問題ありません。遺言書は遺言者自身で保管します。
秘密証書遺言も自筆証書遺言と同様、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で検認してもらう必要があります。
秘密証書遺言については、遺言書の中身を公証人が確認しないため、法的に不備があるケースがあります。その為実務的にもほとんど使われておらず、お勧めではありません。
まとめ
遺言書の書き方をおさらいしましょう。
①
サンプルを手元に置き、参考にしながら間違えないようにする
②
必要なものを全て準備する
③
ルールに則って書く
④
保管は遺言書預かりサービスを利用するのがお勧め!
遺言書は、遺される大事な人へのメッセージです。その想いと財産を確実に渡せるよう、この記事を使って遺言書を書いていただけますと幸いです。