遺言執行者は遺言執行に重要!つけるべき人、誰にすべきかを徹底解説
遺言書を書く際に、
「遺言執行者(遺言執行人)は付けるべきなのだろうか?
「誰にした方が良いのか?」
「そもそも遺言執行者とはなんなのだろう?」
等迷われる方も多いでしょう。
遺言書に遺言執行者を書く事や、執行者を決めることは法律上必須ではありません。
しかし、「遺言書通り仲良く分けてもらいたい」、
「遺産分割協議することなくスムーズに遺産分割してもらいたい」と思う方は、遺言執行者をつけられることを強くお勧めいたします。
遺言書をせっかく書いておいても、内容通りに実現できなければ、ただの紙切れになります。
遺言執行者がいない場合は、遺産をもらう人達全員で進めるため、もめる可能性が高くなり、思い通りに遺産を残せない可能性があります。 また、手続き面においては、金融機関から相続人全員分のサインを求められたり、相続人全員の印鑑証明を求められたりと、なかなか進まない場合があります。 ※手続きを妨害するような相続人がいると更に、上記手続きが進みません。 |
遺言執行者を指定していれば、その人の権限で、その人だけで、遺言を遺す人の思いのまま遺産分けをスムーズに進めることができます。
この記事では、遺言執行者の役割から、執行者をつけた方が必要なケースと付けた方が良いケースやまで書いていますので、最後まで読んでみてください。
遺言執行者を遺言書に書くべきケースとお勧めのケース
この章では、※遺言執行者を遺言書に必ず書くべきケースと、書いた方が良いケースを解説していきます。
遺言執行者を誰にすべきかについては、3章で解説しています。
※遺言執行者とは 遺言執人(遺言執行者)とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことを言います。 |
主な役割は以下の通りです。
・「誰が相続人」か特定する
・遺言通りに「手続きをすすめる」
遺言執行者は、相続人(財産を受け取る人)を代表して、遺言実行の手続きを行います。
また、「遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法第1012条)」という強い権限を持っています。
遺言者執行者は、未成年者、破産者以外誰でもなれます(一般的には相続人)。資格等は必要ありません。また、株式会社や一般社団法人、弁護士法人など、第三者の専門家も指定できます。
遺言執行者にしかできない内容は必ず執行者の記載が必要
遺言執行者でなければ、遺言通りに遺言の実現をできない項目が下記の通り2つあります。
この2つに該当する場合は、必ず遺言執行者をつけましょう。
①認知していない隠し子に財産を残したい場合
子供の※認知をしておらず、遺言で子供の認知をしたい方は、遺言執行者が必須です。
遺言で子供の認知をする場合は、法律上、遺言執行者でなければ執行ができないためです。
※認知とは 結婚していない男女の間に生まれた子どもを父親が自分の子供と認めることです。 認知の方法は、 ①父親が生前に認知届を提出 ②認知の調停・訴訟 ③遺言 の3種類があります。 |
↓遺言書に記載する、子供を認知する文章の例
隠し子等がいて、認知しなくても、財産を残すことはできますが、認知したうえで、その子に財産を残したい場合は、遺言執行者を必ずつけましょう。
②相続人(財産を受け取る人)に廃除したい人がいる場合
法律的には、受け取る権利がある相続人から、その権利を廃除(家庭裁判所に申し立てをして相続する権利を無くす事)したい場合も、遺言執行者が必要です。
※注 相続人(財産を受け取る人)から相続権(※遺留分等財産を受け取る権利)を「廃除」する手続きは、法律上、遺言執行者にしかできません。 |
※遺留分とは 亡くなった被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障される遺産取得分のこと。詳しくは以下の記事を参照ください。遺留分の支払いは現金が必要に!正しく理解して揉めない遺言書を作ろう! |
例えば、被相続人(亡くなる人を)生前に、下記のような事由で、廃除したい場合です。
・遺言者(遺言で財産を残す人)を虐待していた
・遺言者に多額の借金を方代わりしてもらった
・遺言者の配偶者であるにもかかわらず、愛人宅で暮らしていた等
排除したい場合は下記の例文の通り、具体的事実の記載が必要です。
↓遺言書に記載する、相続人を排除する文章の例
相続人(財産を受け取る人)を廃除したい場合は、遺言執行者を必ずつけておきましょう。
遺産分割でもめそうなケース等遺言執行者を遺言書に付けた方が良いケース
① 相続人(財産を受け取る人に)認知症の方や知的障害者がいるケース
相続人(財産を受け取る人)に認知症の方や知的障害者がいるケースは遺言執行者を記載すべきです。
認知症の方や知的障碍者がいるケースでは、本人が手続きができません。そのため、※成年後見人制度を利用して手続きを行うため、後見人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
※成年後見人制度とは 成年後見人とは、認知症や知的障害等の精神上の疾患により判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、家庭裁判所から選任された人(司法書士等の専門家又は家族)が、その方のの財産保護や身上監護を行う者のことです。 |
後見人を選んでもらう場合は、3か月~6か月かかります。その為、遺言執行者がいない場合は、後見人を選任を待って手続きする事になります。
遺言執行者がついていれば、成年後見人の選任を待つことなく遺言の内容を執行できますので、相続人に認知症の方や、知的障碍者がいる方は、遺言執行者をつけておくと良いでしょう。
ご本人の財産は、家庭裁判所の監督のもと、成年後見人が管理することになります。また、ご本人(成年被後見人と呼びます)が単独で行った法律行為(契約など)は、日用品の購入等を除いて、成年後見人が取り消すことができるようになります。
ご本人は自由に財産を処分できなくなりますし、周囲の親族も成年後見人の同意なく勝手に使用することができなくなります。
②相続人が遠方(海外など)に住んでいるケース
相続人である子供が海外に住んでいる場合は、遺言執行者をつけることをお勧めします。
遺言執行を行う際、銀行の窓口に来るよう言われることがあり、不動産の名義変更のための資料収集、換価(金銭化)手続きなど、遠方の相続人には難しい場合があります。
③前妻に子供がいるケース
前妻との間にお子様がいる場合は、遺言執行者をつけることをお勧めします。
前妻との子供と接触することなく、遺産手続きが可能となるためです。
相続人同士が会う事によって、揉めそうなケースでは遺言執行者をつけることをお勧めします。
④法定相続人が複数いるが、1人に相続させたい場合
法定相続人が複数いるが、1人に相続させたい場合は、遺言執行者をつけることをお勧めします。
遺言執行者が相続人の一人であると、他の相続人から公平であるかどうか疑念を持たれるケースがあります。通帳のお金が本当にこれだけだったのか、もっと財産があったはずではないかなど、余計な争いの種になる場合も多いです。
第三者である専門家を遺言執行者にしておくことで、そういった相続人間に無用の疑念を与えず、円満な手続きを行うことができます。
↓遺言書に記載する、遺言執行者をつける文章の例
遺言執行者(相続人又は専門家)の選び方
遺言執行者は、破産者や未成年者以外は誰でもなれます。
一般的には相続人、又は専門家(司法書士・弁護士・税理士)や法人(会社等)です。
この章では、遺言執行者を相続人にすべきケースと、費用を払って専門家に任せた方が良いケースを解説しています。
遺言執行者を「相続人」にする:相続内容が簡単な場合
相続内容が単純で、もめないケースでは、遺言執行者は相続人でよいでしょう。
専門家に任せると費用が発生しますので、余計なコストを払わなくてすみます。
例えば、相続財産が預金だけで、子供2人に均等に分けるだけのような内容であれば、遺言執行者を子供2人のどちらかにしておけば問題ないでしょう。
このように遺産分割が単純で、もめそうにない場合は、相続人を遺言執行者にしても問題ないでしょう。
※注 遺言執行者に選ばれた人は就任を拒否する事も可能です。 就任を拒否する場合は、生前の遺言者や相続人との人間関係等考慮した上で就任するかどうかを早い段階で決定し、その結果を速やかに相続人に通知する必要があります。 |
遺言執行者を専門家に依頼する:遺産分割が複雑なケースや財産が多いケース
①相続財産に複数の不動産がある場合
複数の不動産を相続する場合は、遺言執行者を専門家にすることをお勧めします。
土地を相続人に相続させる場合は、相続人全員の印鑑証明が必要になってきます。遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者の印鑑証明があれば名義変更が可能となるので、遺言の実行がスムーズに進みます。
相続の内容に納得していない相続人がいる場合は、遺言の実行に時間がかかるケースもあります。
複数の不動産があり、相続人同士でもめそうな場合は、遺言執行者を専門家にしておいた方がよいでしょう。
不動産が多いケースでは、不動産登記に詳しい司法書士がお勧めです。
②相続人同士の仲が悪い場合や、分け方が均等でない場合
相続人(財産を受け取る人)同士が仲が悪いケースや財産の分け方が均等でない場合は、専門家に任せることをお勧めします。
理由は、このようなケースで相続人が遺言執行者になると、誹謗中傷を受けたり、妨害される場合もあるためです。
例えば、3人兄弟の、長男だけにすべての残すようなケースでは、もめるケースが多いと思います。専門家にしておけば、長男が誹謗中傷を受けることもなく、スムーズに相続ができます。
このようなケースでは、下記のように、財産の内容によって専門家を決めると良いでしょう。
・不動産等の財産がなければ、行政書士、司法書士、弁護士、日本相続知財センターなどの専門法人
注:個人の専門家が死亡、認知症になるケースもあるため、できれば法人が良いでしょう
遺言執行者に指定された人が実際に行う業務
遺言執行者に指定された方が、実際に行う業務の流れは次の通りです。
①就任通知書を作成・交付
遺言執行者に指定された場合、遺言執行者を承諾するかしないかを判断します。承諾するときめたら、就任通知書を作成し相続人に送付します。
②相続財産を調べる
被相続人の財産の調査を行います。相続財産は預貯金や不動産などのプラスの財産以外にも負債等の財産も含まれます。
③相続人を調べる
財産の調査と同様に、相続人となる人が誰なのかを調べる必要があります。相続人が誰になるか調べ終えたら、相続人の戸籍等を収集します。
④財産目録の作成・交付
財産の調査と相続人の調査が終了したら、財産目録を作成します。被相続人の財産の内容を相続人にお知らせする必要があります。作成した財産目録は遺言書の写しと一緒に相続人に交付します。
⑤遺言内容を実行する
遺言の内容に記載されたとおりに財産を引き渡します。
⑥任務完了後に文書で報告をする
遺言に記載されていた内容をすべて実行したら、任務完了報告を行います。任務完了の報告は文書によって相続人に報告します。
遺言書以外で遺言執行者を決める方法
遺言書以外で、遺言執行者を決めようと思ったら下記の2つの方法があります。
①家庭裁判所に執行者を決めてもらう
下記のケースでは、家庭裁判所で遺言執行者選びの申し立てを行います。家庭裁判所に申し立てを行う際は、事前に遺言執行者の候補者を決めておく必要があります。
・遺言に遺言執行者の指定や遺言執行者を指定する人についての記載がない場合
・遺言執行者に指定された人が断った場合
・遺言執行者に指定されている人がすでに死亡している場合
②第三者に決めてもらう(遺言執行者を指定する人だけ決める)
遺言書で遺言執行者は指定はせず、「“遺言執行者を決めてもらう人”を指定」する方法です。
遺言者が遺言を作成している時と実際の相続開始時で状況等が変わっている可能性があるためです。
遺言執行者を決めてもらう人だけを指定しておき、相続が発生したその時に一番ふさわしい人に遺言執行者になってもらいたい時に取る方法とる方法です。
まとめ
遺言執行者について解説してきましたが、遺言執行者は、相続人が1人ではなく複数の場合、基本的につけることをお勧めします。
専門家に任せる場合は、費用面が専門家によって異なりますので、一度専門家の無料の相談等を受けてみると良いでしょう。
<お勧めの相談場所>
相続知財センター さくら支部