
「家がほしい」
「マイホームを購入するのが夢だったんだ」
マイホームを持つということは、長い人生のなかでも大イベントですね。
ネットで物件を探したり、住宅展示場やモデルルームを見学したり。とてもわくわくしてきますね。
住宅購入は人生そのもの。その後の生活スタイルも変わっていきます。
多くの人は住宅は一括で購入することはできません。住宅ローンを組むことになります。
25年~35年間、ローン返済をしていくわけです。
住宅購入で一番考えなくてはいけないことは、“いくらの物件が買えるか”ではなく、“いくらなら返済していけるか”です。
家を購入する前にマネープランを行うことが大切なんです。
これをしないで住宅を購入してはいけません。
無理をして住宅ローンを組んでマイホームを手に入れても、数年後にはその住宅ローンに振り回され、最終的には家を手放してしまう…そんなことになっては元も子もないからです。
でもマネープランなんて、自分でできるものではないし、誰に相談をすればいいのかと思いますよね。
住宅購入の相談は、ハウスメーカーや不動産会社の営業ではなく、独立系FPがいいでしょう。
この記事では、
・住宅購入の相談がどうしてFPがいいのか。
・住宅購入で考えなくてはいけない大切なこと
などを解説していきます。
最後まで読んで、後悔のないあなたにとって最高の住宅を購入しましょう。
【執筆者】九鬼直美 (FP、住宅ローンアドバイザー)
【所属】独立系FP事務所 (有)ライフドアーズ
目次
1 ハウスメーカーや不動産会社の言われるがままに購入しない マネープランをたてることが重要
住宅展示場やハウスメーカーの担当と話していくうちに、最初になんとなく予想していたものとは違う方向へ話がどんどん進んでいってしまった…ということをよくききます。
住宅展示場やモデルルームをみると、ステキな家具やおしゃれなインテリアで夢がひろがります。そこで担当の人がローン計画表を作成してくれます。
「あなたの年収なら、こんな素敵な家が買えてしまいますよ」
そんなことを言われると、その気になってしまったりします。
ちょっと待ってください!
ハウスメーカーや不動産会社は、1円でも高い家を買ってほしいから、年収だけ聞いて、ローン計画表をつくって、“この金額まで買えますよ”と勧めてくるのです。
ハウスメーカーや不動産会社は、家を売ることが仕事です。その人がこの先、ローンを払っていけるかどうかまで考えてくれることは極まれです。家さえ買ってくれれば、その先ローン返済が苦しくなっても、もう関係ないですから。
“いくらの物件が買えるか”ではなく、“いくらなら返済していけるか”を考えることが必須です。
そのためには、家を見に行く前、行った後でもいいですから、マネープランをたてることが重要です。再度言いますが、これをしないで住宅を購入してはいけません。
ハウスメーカーや不動産会社の言われるがままに家を購入したら
・ローン返済ができなくなった…
・生活が苦しくなった…
となってしまわないためにきちんとマネープランを考えましょう!
では、そのマネープランはどうすればいいのでしょうか。2章で詳しく説明します。
不動産屋さんの商談コーナーで、住宅ローンシミュレーションをしてもらった方が、私の元に相談しにいらっしゃいました。
「年収700万円だが、返済比率から、7600万円のローンが組めるといわれた。毎月返済額は20万円。
今の家賃は9万円。7600万円の物件が買えるのは嬉しいが本当に大丈夫?」
■返済比率とは 上記の例だとローン返済20万円/月 ×12か月 =240万円/年間 |
返済比率の範囲内なので、7600万円まで借りられると言われたのですね。
年収400万以上 … 35%以内 目安
年収400万未満 … 30%以内 目安
今の家賃が9万円の人が、いきなり毎月のローン20万円とは厳しいですね。返済比率だけで借入額を計算するのは危険です。
毎月ちゃんと払えるのか?むしろ、毎月返済額からいくらまで借り入れできるかを計算した方が良いと伝え、住宅購入計画を再度、一緒に検討することにしました。
こちらも不動産会社の商談コーナーで住宅ローンシミュレーションをしてもらい、その結果を持って相談にいらっしゃいました。
「最低金利の0.45%の変動金利で計算してもらった結果、月の返済額は今の家賃とかわらない。ここ数年、金利は上がっていないから大丈夫と言っていた。これなら払っていけそう。」
今までは金利があまり上がっていないかもしれませんが、これから35年間、金利が上がらないという保障はありません。
毎月の返済額がギリギリの場合は、金利が上がったら払えなくなってしまいます。金利上昇も考えて、変動にするのか固定にするのか考えるべきです。
この方が適しているのは「固定金利」か「変動金利」か。再度、住宅ローンのシミュレーションを行いました。
「15歳と13歳と11歳の子どもがいる5人家族。マンションを検討している。不動産会社の人から『お子さんが3人なら、4LDKは必要です』と言われた。都内の4LDKのマンションはとんでもなく高いので、支払いが不安…。」
子供一人一人に部屋を用意するならたしかに4LDKは欲しいですね。でもこのケースの場合は、
上の子があと3年で大学の下宿で家を出るかもしれません。
就職で7年後には家を出るかもしれません。
今のことだけではなく、先の事を十分に考えて部屋の広さを考える必要があります。
子供たちの成長と、それに伴って変わるライフスタイルも考慮に入れ、イチから購入計画を練ることにしました。
2 人生設計のプロ、FPに相談しよう
1章ではハウスメーカーや不動産会社に相談に行った事例などをご紹介しました。言われるがままに住宅購入をしてはいけません。
何度も言いますが、住宅購入の前にマネープランをたてることが重要なのです。
では、住宅購入の相談、住宅購入をふまえたマネープランをたてるには誰に相談をすればいいのでしょうか。
住宅購入の相談は、人生設計のプロ、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談しましょう。
ここでいうFPとは、独立系の、中立な利害関係のないFPです。
利害関係のない、第三者からのアドバイスであれば、無理な住宅購入もさけらるでしょう。
■独立系FP(ファイナンシャルプランナー)とは FPは大きく分けて「独立系」と「企業系」に分かれます。 銀行や保険会社、証券会社などの金融系の企業に勤めているFPを「企業系FP」と呼びます。こちらが大半です。 逆に、どこの企業にも属しておらず独立したFPを「独立系FP」と呼びます。 |
※「FP相談会」の裏側 |
ではなぜ、独立系FPでなくてはいけないのでしょうか。
独立系FPなら、住宅ローンだけを考えるのではなく、将来のライフイベントも考えてマネープランをします。
独立系FPには以下の3つの要素が備わっています。
①【包括的】
住宅購入はライフプラン全体を考える
→つまり、失敗しない
②【効率的】
その人にあった一番効率の良い住宅プランニングを考える
→つまり、もっとも得をする(損しない)
③【親近感】
住宅以外でもお金に関するあらゆること、困った時にはいつでも(住宅購入後でも)何でも気軽に相談できる。
→つまり、お金の悩み、お困りごとの強い味方
以下3つの要素を詳しく具体的に説明します。
2-1 住宅購入だけでなく、ライフイベントも考えて人生を『包括的』にアドバイス
FPなら、住宅ローンだけを考えるのではなく、将来のライフイベントも考えて資金計画をします。
【例】
・教育費はいくらかかるか
・老後資金はいくら必要か
・現在の預貯金と今後の年間収支はどうなっていくか
これらを考えずに住宅ローンを組んでしまうと、「○○に必要なお金が足りない!」となってしまいます。
今後おこりうるライフイベントをふまえて、毎月の返済額はいくらだったら無理なく返済していけるのか、考えなくてはいけません。
FPであれば、これらを『包括的』に考えアドバイスをしてくれます。
場合によっては「ライププランシミュレーション」を作成し、このローン返済額でずっとやっていけるか、実際の数字をだしてアドバイスを行います。
ーライフプランシミュレーションイメージー
残念ながら、ハウスメーカーや不動産会社でここまで行ってくれることは稀です。
「借りられる金額」と「返済できる金額」は違います!
“月々、ちゃんと払えるのか”を考える。そのためには、上記のような収支(キャッシュフロー)を把握する事が大切なのです。
2-2 一番良い住宅プランニングを『効率的』にアドバイス
住宅ローンというものは、長期に渡るローンですから、住宅プランニングをするうえでは、
様々なことを考えて計画をする必要があります。
それら、一番効率のいい住宅プランニングのアドバイスができるのも独立系FPです。
例えば、
・住宅ローン減税も視野にいれ年間収支はどうなるか
・繰り上げ返済はどうすればいいか
・今入っている生命保険と団信との関係は どうするべきか
・固定金利と変動金利はどちらがいいのか、あるいは変動金利の上昇における固定との比較
・団信で3大疾病付、七大(八大)疾病付と生命保険・医療保険との兼ね合い
とても具体的な内容を挙げましたが、実は住宅購入において、これらも考えて、どれがあなたにとって一番効率がいいか?がとても重要です。
人それぞれ環境が異なりますので、ひとそれぞれ「ベスト」は異なります。独立系FPは、その環境を考慮し、”あなただけのベストな住宅プラン”を真剣に考えてくれるでしょう。
2-3 住宅購入だけでなくお金に関することを何年後でもずっとフォローしてくれる
独立系FPと聞くと
「気軽に相談できない…」
「相談料が高そう…」
という印象を持っている方もいらっしゃると思います。(実際そういった独立系FP事務所もありますが…)
しかし、実は無料で何度でも相談ができ、気軽に相談できる身近な独立系FP事務所も存在しています。
独立系FPでは住宅購入相談だけでなく、お金に関する相談は何でもできます。
お金に関することで困ったことがあったら何でも相談できる親近感のあるFPに出会えたら、今後ずっとあなた強い味方になってくれますね。
実は、相談相手にふさわしい独立系FP事務所を探すのはとても難しいです。独立系FP事務所自体の数が少ないのがその原因です。しかし、探す方法は確かにあります。
独立系FP事務所の探し方は大きく分けて2つあります。
①インターネットでさがす
②独立系FP事務所が開催しているセミナーに参加する
詳しくはこちらの記事に書いていますのでぜひお読みください。
→ 独立系FPを探す、おすすめの方法
<不動産会社の言われるままにマンションを購入し、後悔した友人の話> 私の友人は20年前に、不動産会社のいわれるままにマンションを購入してしまいました。返済比率で「ここまで借りられますよ」と言われたのです。当時の金利は現在よりも高く、”4%”で固定金利にしてしまっていました。(金利が高い時に固定金利を選択するのはリスクがあります。詳しくは4章で解説します。) その後、こどもが3人生まれました。だんだん住宅ローンの返済が厳しくなって、ちょくちょく滞納をするようになってしまいました。借入当時の金利は4%ですが、世の中の金利はどんどん下がりました。 低い金利へ住宅ローンの借換をしたかったのですが、滞納があるので審査が通りません。 そんな苦しい生活の中、子どもたちも高校からアルバイトをしてくれました。滞納はなくなり、やっと住宅ローンの借換ができて、ローン返済も楽になったようです。 しかし、上の子二人は大学生ですが、全額奨学金です。こども達が借金を負う事になってしまいました。教育資金も視野に入れマネープランをたてておけばこんなことにならなかったのに。 家を買う前に信頼できるプロに相談していれば、こんなにつらい20年を送ることはなかったでしょう。 友人も「無謀な大きな買い物をした。後悔している」と言ってました。 |
3 住宅購入の相談時に事前に考えることや確認するべき内容
住宅ローンのことや、毎月返済額のことなど説明してきました。
住宅購入において、事前に考えなくてはいけないことや確認すべきことは以下の内容です。
<購入する住宅のこと>
・そもそも、賃貸で過ごすか 購入するか
・戸建てかマンションか
・周辺環境
・日当たり
<住宅ローン関係>
・住宅ローンの金利の種類(変動金利と固定金利)
・返済方法(元利均等と元金均等)
・返済負担率
・住宅ローンの諸費用
・保証料
・団信(3大や七大(八大)疾病つきにするか(金利上乗)
<税金や保険 その他の事>
・固定資産税
・マンションなら管理費 修繕費(途中で上がるとか、追加の修繕費かかる場合あり)
・火災保険、地震保険
・住宅ローン控除
相談のポイント! FPに相談に行ったら、住宅購入以外のことも相談して大丈夫です。むしろ、返済計画に関わる大事なことなので、お金についてのことは、ぜひ何でも相談してみてください。 |
相談に行くときは事前に
・上記関連の資料
・返済シミュレーション(もらっている場合)
・物件情報
・年収のわかるもの
・収支のわかるもの(家計簿など支出のわかるもの)
などを準備、持参すると話はスムーズに進みますよ。
4 住宅ローンで最も重要なことは、変動金利か固定金利か
住宅購入で考えることは、いくらまでの家を変えるかではなく、住宅ローンがいくらまでなら返済できるかが重要であることを説明してきました。
さて、その住宅ローンですが、最も考えなくてはいけないのは、「変動金利」か「固定金利」かです。
この違いをきちんと理解しないまま住宅ローンを組んでしまうと、返済計画が狂ってしまいます。
4-1 変動金利と固定金利とは
●変動金利
金利が変動する金利タイプのこと。半年ごとに金利が見直しされる。しかし半年後に返済額がすぐにあがるのではなく、5年間は変わらない。6年目に返済額が変わるがこれまで毎月払っていた返済額の、最大1.25倍が上限。上限はあるものの、金利が上昇すると、利息割合が増えるので、その結果なかなか元本が減らず利息ばかり支払う事態になりかねない。
●固定金利期間選択型
当初から一定期間の金利はかわらない。期間は3年、5年、10年など選択。
期間が短いほうが金利は低い。期間が終了したらその時の金利が適用。変動金利と違い上限がないので、期間終了後、返済額が急に増加する場合がある。
●全期間固定金利
最初から最後まで金利がかわらない。
返済額がずっとかわらないので計画がたてやすい。
変動金利と固定金利を理解することができました。では変動と固定ではどちらがいいのでしょうか。次の章で解説いたします。
4-2 今は低金利!低金利(金利が上昇局面)では固定金利が有利
変動金利は、固定金利に比べて、金利は低いですが、変動ですからいつまでも(5年間も)金利が低いのが
続くとは限りません。むしろ金利は少しずつでも上がっていくのではないでしょうか。
金利が上がっていけば、毎月の返済額が上がってしまい、生活費を圧迫しかねません。変動金利はこのリスクが最も怖いのです。
変動金利は固定金利と比べ、毎月返済額は安くなりますが、5年間の間だけです。しかも、5年の間に年2回金利は変わっているのです。
金利が上がっていけば、その分利息の割合が多くなっていきます。
一方、固定金利はというと、現在は(2020年8月)過去に比べて金利が低い状況です。
2020年8月現在の住宅ローン金利は ・固定金利 … 1.290%~2.030%(フラット35、返済期間21年以上) ・変動金利 … 0.399% ~1%(銀行等) |
金利が低いうちに固定金利で固めてしまいましょう。
固定金利は、最後まで金利が変わらず、返済額も変わりません。
目先の数字で判断するより、固定か変動か、よく考えることが重要です。
具体例で、固定金利と変動金利で、支払額がいくら違うのか見てみましょう。
金利が低い方が魅力だと思う人もいるかもしれませんが、この先金利がどうなっていくかを見極めなければいけません。そしてそれを予測するのは大変難しいです。
そのためには、2章で説明したように、第3者であるFPに相談するのが良いでしょう。
<知り合いの事例> 銀行は変動ばかり 固定金利も考えていると話しましたが、最後まで固定金利の書類は出してくれなかったそうです。 銀行でも全期間固定のフラット35も取り扱っている銀行もあります。 |
まとめ
住宅は人生最大のお買い物。家族の人生を左右すると言っても過言ではありません。
後悔のない住宅購入には、第3者に相談したり意見を求めることが必要です。
相談はぜひ、利害関係のない独立系FPに行ってみましょう。
あなたとって、最高のマイホームを手に入れられる結果となることを願っています。