介護離職しないために。離職を防いだ3つの事例と介護費負担の軽減方法
在職中の方で、親の介護をしている、もしくはもうすぐ親が介護状態になりそうという方は
「親の介護は自分がしないといけない(してあげたい)」
「できるだけ親の希望を叶えてあげたいけど、仕事と介護の両立ができるか不安…」
「介護はお金がかかりそう…。今後いくら必要なの?」
など不安を感じていたり、悩んだりしている方も多いと思います。
中には、介護のために仕事をやめようか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、現在介護状態の祖父がいる、ファイナンシャルプランナーの私としては、介護離職をすることはおすすめできないと思っています。
なぜなら、介護離職をすると経済面、精神面、肉体面どれをとっても、負担が軽くなるどころかかえって重くなることがほとんどだからです。
特に経済面では多くのデメリットがあります。
とはいっても「仕事」と「介護」の両立、とても大変ですよね。
この2つを両立するためには、
・体力面、時間面を解決する介護サービス(施設や居宅サービス)の有効利用
・サービス面を有効に使う分、負担となる介護費対策
が必要となります。
この記事では「介護サービスの利用」と「介護費の軽減をする対策」をして、介護離職を回避する方法を解説していきます。
更には、具体的な事例、介護について困った時の相談先も書いています。
介護離職はご自身だけではなく、国や、企業にとってもマイナスな面が多いと思います。
この記事を少しでも多くの方に読んでいただき、介護離職を回避していただけると幸いです。
介護離職をしないためには「介護サービス」を有効に使おう
※介護サービスを使うことで介護離職を避けることが可能です。
なぜなら、介護サービスを使うことで、以下の2つの問題が解決できるからです。
・介護サービスを使うと介護にかける時間が減る
・介護にかかる精神的・体力的といった負担が減る
その結果、仕事をする時間や意欲を保つことができるようになります。
介護サービスとは
介護サービスとは介護を必要とする人が利用できるサービスです。
大きくわけて「居住型」「施設型」「地域密着型」の3つに分かれ、それぞれ利用料がかかります。
私たちの負担額はその内の1~3割※ですが、要介護度ごとに1ヶ月に1~3割負担で利用できる金額(支給限度額)が設けられています。(下表参照)
※介護保険制度を維持し、その公平性を確保するために、現職並みの所得がある高齢者については介護サービスの自己負担割合が2割に引き上げられました。
さらには、2018年8月からは所得によっては自己負担額が3割となるように制度が改正されました。
また、限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。
例えば、仕事をしている間は訪問介護(ホームヘルパー)に来てもらったり、デイサービスを利用したりと、親を家で1人にすることがなくなります。
その間、介護する人は仕事の時間を確保できますし、仕事に集中することができます。
また、介護サービスでは訪問リハビリや訪問看護といった専門的なサービスも受けられます。
「少しでも食べないと」と無理やり食べさせて誤嚥させてしまった。
「運動しないと足腰が弱ってしまうから」と無理に立たせたり歩かせたりして転倒させてしまった。
など、介護に不慣れなうちにはよく聞く話です。
慣れない介護を一生懸命すればするほど、体力的にも精神的にも追い詰められます。
しかし、介護サービスを利用すると精神的にも体力的にも余裕が生まれ、仕事をする意欲を保つことができるでしょう。
しかし、介護サービスを利用すると費用がかかることから、利用をセーブしている方もいるかもしれません。
ですが、介護施設やサービスなどを積極的に利用して、介護の負担を軽くすることがおすすめです。
受けられる介護サービスについては2章でくわしく解説していきます。
介護離職はあなたの老後も苦しめることになる
介護を理由に仕事をやめることは、現状だけではなくあなたの老後まで苦しめることになります。
なぜなら、介護離職をすることは特に経済面でのデメリットが多いからです。
例えば、
- 収入がなくなる
- キャリアが継続できなくなる
- 一度離職してしまうと再就職がむずかしい
収入がなくなるということは、自分の老後資金を作ることが出来なくなります。
ご自身の老後生活にまで影響が出ますし、ご自身が介護状態になったとしても、介護費用を自分で捻出することがむずかしくなります。
よって老後破産のリスクも高まります。
介護離職は絶対に避けるようにしましょう。
介護サービスを使って介護離職を防いだ事例
この章では、実際に介護サービスを使って介護離職を防いだ事例をご紹介します。
1章でもお伝えしましたが、介護離職を避けるためには、介護サービスを利用して、仕事の時間や意欲を保つことが大事です。
もちろん、介護サービスを受けると介護費がかかります。
介護費の負担を抑える方法は、次章にくわしく書いていますのでそちらもお読みください。
介護サービスを受けるためには、介護申請の手続きをする必要があります。
介護申請の流れについては、こちらの記事にくわしく書いていますので是非お読みください。
【事例①】介護費用を押さえた例
仕事の時間や休息時間を確保するために在宅介護サービスや施設サービスを利用。
毎月の介護費用を支給限度額内の19,476円で押さえて介護離職を防いだ事例
【解決方法】
複数の介護サービスを利用して日常の介護の負担を減らす
週末には短期入所生活介護(ショートステイ)を利用して、自分の休息時間を確保する
【利用した介護サービス例】
〇通所介護(デイサービス) 7~8時間未満の利用/日
デイサービスセンターで食事・入浴などの介助・機能訓練が受けられる
〇訪問介護(ホームヘルプサービス) 30分以上一時間未満/1回
ホームヘルパーに自宅を訪問してもらい、身体介護や生活援助を受ける
〇訪問リハビリ
リハビリの専門家に訪問してもらい、自宅でリハビリが受けられる
〇短期入所生活介護(ショートステイ)
介護老人福祉施設などに短期間入所して食事・入浴などの介助・機能訓練が受けられる
【週間スケジュール】
【自身が担っている介護】
日常の食事作りを含む家事
通院の際の付き添い ⇒ 両立支援制度を使用(後述します)
・日中は誰かの見守りがあるため、仕事に集中できた
・月に2回はショートステイにすることで自身の休息時間も保つことができた
【事例②】高額介護サービスを利用した例
遠方に住む老々介護の親の介護負担を軽くするため、在宅介護サービスを毎日利用。
高額介護サービスを申請して毎月の介護費を約27,000円抑え、仕事をやめずに親の介護を支えた事例
【解決方法】
介護サービスを毎日利用して父の負担を軽減
通院やリハビリに通うことが困難なため訪問系のサービスを利用
夜間も心配なため、週に1回は夜間の訪問介護を利用。
ケアマネジャーと密に連絡をとることにより、両親の状況を把握する
【利用した介護サービス例】
〇訪問介護(ホームヘルプサービス) 30分以上1時間未満/1回
〇訪問リハビリ
〇訪問看護 30分~1時間未満/1回
看護師などに訪問してもらい、床ずれ確認、手当、点滴や服薬の管理をしてもらえる
〇夜間対応型訪問介護
夜間の定期的な巡回で介護、緊急時など利用者の求めに応じて介護が受けられる
【介護費用負担額】
※高額介護サービス費については3章介護費を抑える方法⑤にて説明します。
【週間スケジュール】
【自身が担っている介護】
1日1回両親やケアマネジャーに連絡をし、様子を確認。
月に一回の帰省・見守り
・介護サービスを利用した分、介護費の負担が大きいが、介護費を抑える方法を使い軽減することができた
【事例③】介護施設を利用した例
寝たきり状態の母。つきっきりの介護が必要なため仕事との両立がむずかしい。
母には介護施設に入居してもらい、働き方は変えずにした事例
【解決方法】
自宅から通いやすい場所で、介護付きの施設を見つける
【利用した介護サービス例】
〇介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
自宅では介護出来ない方(要介護3以上)が対象。
食事・入浴などの日常生活の介護や健康管理が受けられる
【介護費用負担額】
※3章の介護負担を抑える方法⑤の介護の親と世帯分離することで親が非課税世帯となれば、居住費、食費が軽減されます。(くわしくは3章をお読みください)
【週間スケジュール】
【自身が担っている介護】
週に3回、施設へ訪問して様子を確認
介護サービスを受けると、介護離職をしなくてすみ、自分の生活が保てることがわかりました。
しかし、環境や家族の協力があるかないかで、適しているサービスは変わってきます。
ご両親と自分にあった介護サービスを知りたい方は、地域包括支援センターなどに相談しましょう。
両立支援制度も利用して仕事と介護を両立しよう
介護をしていると通院の付き添い、ケアマネジャーに相談、施設を探すなど休みが必要なこともあります。
仕事と介護の両立を支援する制度もありますので積極的に利用しましょう。
■介護休業制度
要介護状態の家族1人につき通産93日まで、3回を上限として介護休業を取得することができます。
■介護休暇制度
要介護状態にある家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日の休暇を取得できます。
■介護休業給付金
要介護状態の家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の条件を満たせば介護休業前の賃金の67%支給されます。
くわしくはこちらでご確認ください ⇒ 育児・介護休業法について(厚生労働省)
介護費は軽減できる!介護費の負担を軽減する具体的な方法
この章では、介護費の負担を軽減する方法を解説していきます。
少しむずかしい内容になりますので、ご自身にあった方法がわからない方は相談をしましょう。
(おすすめの相談先は次章に書いています)
費用面でも介護の負担を軽くして、親も自分も満足がいく介護生活が送れるようにしましょう。
方法① 親を扶養に入れて扶養控除を受けることで子世帯の税金を安くする
親を扶養に入れることで、扶養控除が受けられ所得税や住民税といった税金を安くすることが出来ます。
<使える条件>
・生計を一にしている(仕送りなど金銭的に両親の面倒を見ている場合も含む)
・扶養となる方(家族)の年間の合計所得金額が48万円(令和元年以前は38万円)以下
※同居をしてなくても対象になります。
<控除金額>
方法② 障害者控除を受けて親や子世帯の税金や介護費を安くする
お住まいの市区町村にて障害者控除認定書を受けることにより、障害者控除を受けることが出来ます。
(障害者手帳(国への申請)がなくても、障害者控除を受けられる場合があります)
<使える条件>
市区町村で障害者控除認定書を受ける
<控除金額>
方法③ 子世帯(所得が高い人)がまとめて社会保険料控除を受けることで介護負担を抑える
社会保険料控除を子世帯の所得が高い方がまとめて申告すると、税金が安くなります。
<使える条件>
親の健康保険料をかわりに支払っている
<控除金額>
支払っている健康保険料の全額が所得控除になる
※同居してなくても、生計を一にしていれば申告可能
方法④ 親や子世帯で医療費控除を受ける
ご自身や家族でかかった医療費や介護サービス費の合計が10万円以上超えた場合(総所得が200万円未満の方は、総所得金額の5%の金額)、医療費控除をうけることができます。
<使える条件>
医療費や介護サービス費の自己負担額の合計が10万円を超えた場合
<控除額の計算>
医療費の総額 - 保険金などで補填された金額 - 10万円 = 医療費控除額
方法⑤ 介護の親と世帯を分けて介護費用を抑える
親と世帯分離(住民票に登録されている一つの世帯を二つ以上の世帯にわけること)をすることで、親が非課税世帯になると介護費を安く抑えることができます。
<使える条件>
親と世帯分離をする
<介護費の軽減額>
非課税世帯になった場合
・介護サービスにかかる居住費や食費の負担が軽くなる
・介護費の自己負担額が下がる
非課税世帯になると介護費の自己負担が軽減される
非課税世帯になると
①介護施設サービスを利用した際の居住費や食費の負担が軽くなる
②自己負担限度額が下がり、介護負担額が軽減する
となり、介護費の負担を更に軽くできます。(2章【事例③】参照)
①介護施設サービスを利用した際の居住費や食費の負担が軽くなる
②自己負担限度額が下がり、介護負担額が軽減する
下記の限度額を超えたときは、超えた分が「高額介護サービス費」としてあとから給付されます。
※給付を受ける場合は、市区町村への申請が必要です。
※同じ世帯にサービスの利用者が複数いる場合は、全員の利用者負担を合計します。
区分 | 負担の上限(月額) |
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方 | 44,400円(世帯) |
世帯のどなたかが市区町村税を課税されている方 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市区町村税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されておらず、かつ、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
方法⑥ 高額介護合算療養制度を利用して介護費の自己負担額を抑える
高額介護合算療養制度を利用すると、介護費と医療費の両方の負担を抑えられる場合があります。
<使える条件>
医療保険と介護保険のどちらも利用する世帯で、自己負担が高額になった場合
<医療費・介護費の自己負担限度額>
方法⑦ 国や市町村の補助金制度を活用し介護費の負担を抑える
これまで、介護サービスについてお話してきましたが、要介護者が「他人に世話をしてもらいたくない」、家族が「他人を家に入れたくない」などの理由から、介護サービスを利用しない方もいるかもしれません。
そのような介護保険サービスを使用しない家庭に年額10~12万円が支給される「家族介護慰労金」制度があります。
<使える条件>
・要介護4または5の認定を受けている方を介護している同居の家族
・1年間介護サービスを利用していない
・通算90日以上の入院をしていない
・世帯が住民税非課税世帯であること
<支給額>
年額10~12万円
※自治体によって異なる
申告漏れをしていた場合でも、5年以内はさかのぼって申告できる
上記で説明した介護費を抑える方法①~④に関しては、5年以内はさかのぼって申告が出来ます。
申告されていない方は、さかのぼって確定申告が必要です。
多少手間がかかりますが、実際に、大きな金額が戻ってきた事例もあります。
こちらの記事に介護費用や税金を安くする方法や具体的な事例、手続き方法などくわしく書いています。
是非読んでみて下さい。
介護について困った時の相談場所
前章で介護費を抑える方法をお伝えしましたが、ご自身で判断できない方や、どうしていいか悩む方もいますよね。
介護費用についてお悩みの方は、ぜひ私が所属している「ライフドアーズ(FP事務所)」へご相談ください。
実は、介護マネーについて正しく専門的な知識を持つ人は少ないのが現状です。
(もしくはそれぞれの専門分野に強くても、横断的(トータル的)に相談出来る場所は限られてきます。)
当FP事務所ライフドアーズでは、介護についてかかる費用についてもくわしく、もちろん税金や社会保障制度にも精通しています。
介護費についてどこに相談していいのかわからない方は、お気軽に当事務所へご相談ください。
その他に介護について相談できる場所
介護費以外で、介護について困った時の相談場所は以下になります。
困ったときは1人で悩まず、誰かに相談するようにしてくださいね。
介護サービスについて ⇒ 地域包括支援センター、保険福祉課
休業制度について ⇒ 勤務先、ハローワーク
まとめ
介護離職をしてしまうと親だけではなく、ご自身の老後まで苦しめてしまいます。
そうならないためにも
「積極的に介護サービスを使う」
「介護サービスにかかる費用を軽減する」
この2つを実践して、介護離職は絶対に避けるようにしましょう。
もし、ご自身にあった方法がわからない場合は、介護制度にくわしいファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
ひとりで悩まず、介護生活を乗り越えていきましょう。
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