つみたてNISAは30代投資初心者にお勧め!運用・始め方徹底解説

30代で投資未経験の方や、投資に興味があるもののなかなか踏み出せないでいる方は、今年こそ、まずは「つみたてNISA」からチャレンジしてみましょう。
そもそもつみたてNISAは、投資に対して税金が有利な制度です。2014年から既にNISA制度(成人NISA)がスタートしていますが、その改良版として2018年1月からスタートしました。
つみたてNISAが生まれた背景としては、高年齢層を中心に成人NISAの口座開設件数が伸びてきたものの、20代、30代の普及率が悪かったのが一つの要因です。
例えば、つみたてNISA制度が始まる前は、30代は6.6%(注)と普及率が低く、60代の約14%(注)に比べると半分以下です。
こういった背景のもと、若い世代を取り込むために作られた制度です。また、つみたてNISAは投資信託しか購入できませんが、投資信託の販売側(金融機関)で今まで問題視されていた点である、
- 回転売買(短期売買)による金融機関の手数料稼ぎ
- 投資経験に見合わない商品販売(初心者にハイリスク商品を提供)
- 若年層に向かない毎月分配型商品の販売
を取り除き、まさに、30代初心者に向けて作られた制度だと考えます。
30代で老後資金のつみたてなら、iDeco(個人型確定拠出年金)がぴったりの制度です。(参照:FP公開!私が考える確定拠出年金(401k)やiDeCoの選び方)
逆に,お子さんの為に途中取り崩したり、住宅資金として取り崩したりする可能性のある方は、つみたてNISAがぴったりです。
今回は、成人NISAと比較しながら、つみたてNISAの良さを徹底解説していきます。
(注)
金融庁:NISA制度の効果検証結果
総務省:年齢(5歳階級),男女別人口及び割合-総人口(各年10月1日現在)
を元に計算。
つみたてNISAってどんな制度?
つみたてNISAは税金がお得な制度
◆そもそも投資に掛る税金は?
つみたてNISAとは毎年40万円(月々33,333円)の投資に対して、20年間非課税で最大800万円運用できる制度ですが、そもそも投資に掛る税金は何に対して、どれくらいかかるのかご存知でしょうか。
一般的に、投資信託などを運用して利益が出た場合の税金は、その運用益に対して約20%(所得税15%、住民税5%)かかります。(1万円の利益が出たら利益は約8,000円)。その税金が0円になる制度がNISA制度です。NISA自体は2014年からスタートしていますが、2018年1月1日より新たに『つみたてNISA』がスタートしています。
◆つみたてNISAのポイント
成人NISAに比べると、1年間で投資できる限度額は120万から40万に減額されましたが、これから毎月コツコツ、長期での資産形成を目指す方にはとても有利な制度となっています。
- 運用益が全額非課税になる
- 1年間の非課税枠は40万円(1カ月あたり約33,333円が上限)
- 投資方法は定期的な「積み立て」のみ
- 資金は自由にいつでも引き出せる
- 非課税になる最長期間は20年(各年度の投資金額が、それぞれ20年非課税となるため、最長は40年間非課税運用が可能
※例えば、20年目で購入したものは、39年目まで20年間運用できます。
【つみたてNISA 非課税期間(20年)イメージ:金融庁】
※令和2年の税制改正により、つみたて期間が5年延長となり、2042年までつみたてが可能となりました。
◆長期で運用する場合は税金の影響も大きい!?
長期で資産運用する場合は、税金の金額が高額になることも多々あります。下記の図は、運用利回り6%で、運用期間40年間、つみたてNISAをフル活用した場合と、つみたてNISAを使わず毎年20%税金がかかる場合との受取額の比較です。40年後の受取額は、約845万円も変わってきます。
【例:運用利率6%で40年間運用した場合の受取額比較】
※つみたてNISAは、運用20年を超えた後、一般口座(20%課税)で運用するものとして計算
◆つみたてNISAの注意事項
一番の注意点は、つみたてNISAと成人NISAが併用できないところです。ただし、下記の通り年単位での変更は可能です。
- つみたてNISAは成人NISAとの併用ができません。今後NISAを利用する場合は、どちらかを選ぶ必要があります。
- 非課税期間の20年間が終了したときには、NISA口座以外の課税口座(一般口座や特定口座)に払い出されます。なお、つみたてNISAでは、翌年の非課税投資枠に移すこと(ロールオーバー)はできません。
- つみたてNISAは2037年までの制度とされていますので、投資信託の購入を行うことができるのは2037年までです。 (注:2037年につみたてした分はその後20年非課税で運用できます。下記2-1つみたてNISAイメージ参照)
- 金融機関の変更は可能です。ただし、変更しようとする年の9月末までに、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。
- 年単位でつみたてNISAと成人NISAを変更することも可能です。原則として、変更しようとする年の前年の10月から12月の間に、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。
対象商品は、金融庁お墨付きの厳選された投資信託
つみたてNISAは投資信託の中で一定の条件(金融庁資料−後述)を満たしたものだけが投資対象として認められていています。現段階では、日本市場で販売されている約6000本の中から、193本(2020年12月現在)に限られています。
金融庁が、若年層で投資の初心者の方向けに、冒頭でも説明した、次の3つの問題点を排除した商品に厳選されています。
- 回転売買(短期売買)金融機関の手数料稼ぎ
※短期売買とは、1年以内に商品を切り替える行為です。本来投資信託は長期運用を目的としていますが、一部の金融機関で、販売手数料稼ぎの短期売買が問題視されていました。 - 投資経験に見合わない商品販売(初心者にハイリスク商品を提供)
※初心者に理解しにくい、通貨選択型(ブラジルレアルや、南アフリカランド等から通貨を選ぶ商品)の株式投信やハイリスク債券投資の販売等 - 若い世代に向かない毎月分配型商品の販売
※毎月分配型とは、儲かった利益、もしくは預けたお金から一定金額払いだす仕組み。資産形成層は本来、分配金を受け取らず、再投資して複利運用が向いているが、年代問わず、分配型商品を販売しているケースが多い。
〈厳選商品の条件〉
- 投資対象は一定の条件(毎月分配型や投資期間が短いものは対象外等)にあった株式投資信託
- 手数料が(販売手数料※1、信託報酬※2)が一定金額以下(低いもの)に限定
- 193本に限定(※2020年12月23日 参照:つみたてNISA投資対象商品一覧)
※1:販売手数料
購入時のみ販売会社に支払う費用。申込価額の数%をその費用として支払います。ファンドや販売会社によってはこの費用がない場合もあります (ノーロード) 。投資信託によって異なりますが一般的に0%~3%かかります。
※2:信託報酬
投資信託を管理・運用してもらうための経費として、投資信託を保有している間はずっと投資家が支払い続ける費用のことです。ただし、別途支払うのではなく、信託財産の中から「純資産総額に対して何%」といった形で毎日差し引かれます。 投資信託の種類によって信託報酬は異なりますが、年0.5~2.0%程度が一般的です。
※3:インデックス型
投資信託の運用で目標とする指標のことをベンチマークといいます。 日本の株式投資信託ではTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価がベンチマークに使われることが多く、この動きに連動させていくことを目標としている投資信託です。
※4アクティブ型
アクティブ型というのは、インデックス型の反対です。つまり積極的にベンチマークを上回っていく運用を目指していますが、必ずしも上回るとは限りません。
つみたてNISAが成人NISAより大幅改善された点
非課税期間が5年から20年に
つみたてNISAが注目される理由は、なんといっても、非課税期間が20年(参照:1-1「つみたてNISA 非課税期間(20年)イメージ」)に設定された点です。成人NISAでは購入した株式・投資信託などは5年以内に売却することを条件に非課税となっており、非課税期間の短さが問題視されていましたが、今回大きく改善されました。
【成人NISA 非課税期間(5年間)イメージ:金融庁】
非課税枠が600万から800万に
つみたてNISAでは、毎年40万円非課税枠を活用し、20年間続けて投資すれば、最大800万円非課税で運用する事ができます。
成人NISAは前章の図の通り、非課税で運用できる金額が、新規の投資で年間120万円までです。また、2023年までは、毎年120万非課税で運用できるようになっており、総額は、最大600万円まで非課税で運用できます。
初心者に最適!つみたてNISAの最大のメリットを生かした運用術
◆つみたてNISAの投資信託(ファンド)の種類
つみたてNISAの投資対象は、大きく分けると次の4つになります。
- 日本企業全体に投資するファンド(TOPIXや日経平均株価に連動)
- 先進国全体(日本を除く)に投資するファンド(MSCIコクサイインデックスに連動)
- 新興国全体に投資するファンド(MSCIエマージンマーケットグインデックスに連動)
- 世界全体の株式・債券・不動産等に分けて投資するファンド
MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI) (円)
MSCI グローバル株式インデックス シリーズ。 米MSCI社が提供する外国株式インデックス。 国内外において、グローバル投資の際のベンチマークとして最も有名なインデックス シリーズで、多くのETF、投資信託が同社インデックスと連動する形で提供されている。 特に、日本以外の先進国を対象としたMSCI コクサイ(KOKUSAI)インデックスは、日本における外国株式投資の際のベンチマークとして有名。
対象は先進国24か国、新興国(エマージング)21か国、フロンティア国25か国の約70か国。 各国市場の時価総額上位約85%(Small Capシリーズを含めると最高99%)をカバーする広範なインデックス。
◆初心者が20年投資するなら、まずは先進国株式1本で
初心者には分散投資(投資先を分散すること)がお勧めです。金融庁も長期分散投資を推奨しています。
つみたてNISAでは、複数の商品を組み合わせて購入することも可能ですが、今回は初心者向けかつ20年長期運用を前提条件として、先進国株式(MSCIコクサイインデックス連動)の商品1本で始めることをお勧めします。理由は次の通りです。
- 先進国株式(MSCIコクサイインデックス連動※)に投資をすることで、日本を除く複数の先進国や新興国(70か国)に分散投資が可能。過去20年の平均リターンは6.6%
- 日本を除く理由は、日本株式の過去20年のリターンは、(TOPIX・日経平均株価)見ると1.5%~3.2%と先進国株式(MSCIコクサイインデックス連動)より低い為です。
- 新興国株式(上記図⑤,⑦)は平均リターンは高いが、変動幅も大きいため、初心者向きではない。
- NASDAQ総合(上記図⑪)は、平均リターンは高いが、米国の企業のみが投資対象となっており、投資先が分散できないため、初心者向けではない。
(出典:myインデックス)
◆20年間非課税で運用した場合の事例
つみたてNISAで、毎月33,333円非課税で運用し、仮に6.6%平均(MSCIコクサイインデックス平均)で運用できた場合、積立金額の原資は約800万円になりますが、20年後の受取額は約1,654万円となります。
つみたてNISAに向かない事例
手元の資金が潤沢な場合は成人NISAを選ぼう
◆投資金額600万に追いつくには15年間かかる
一括運用なら成人NISAが効率的です。非課税枠だけで考えると、つみたてNISAの方が800万円なので、一般NISAの600万円より有利です。しかし、つみたてNISAが一般NISAの投資枠の金額に追いつくには、15年(40万×15年=600万)もかかります。
※一般NISAは2024年以降、”新NISA“として継続されます。 |
ある程度まとまった資金がある場合は、成人NISA(参照:NISAの始め方)で120万ずつ運用していった方が効率が良いでしょう。
例えば、手元に600万円あり、これを毎年40万円つみたてNISAで投資をすると、全額投資に回る年数は15年です。成人NISAの場合は全額投資に回る年数は5年です。このように手元の資金を運用した場合は、成人NISAを活用した方が運用に回る期間が早い分、運用期間が長くなるため、資金効率が良くなります。
アクティブ型投資信託を選びたい場合も成人NISA!
アクティブ型投資信託は、インデックス型(平均値運用)よりも高いパフォーマンスを狙って運用する商品です。アクティブ型はインデックス型よりも手数料が高いのが特徴です。
アクティブ型の投資信託は、インデックスより高いパフォーマンスを得るために、運用のプロと呼ばれるファンドマネージャーが、次のような工夫をして投資先やタイミングを選んでいます。
- 企業業績が良いところだけに投資をする
- 成長見込みが高い企業にだけ投資をする
- 株式市場が割安な場合にのみ購入する
- 相場が暴落しそうな場合は、現金等でリスクヘッジをする
ただし、実際には、過去の運用実績で統計を取ると、インデックス型の方が7割型、アクティブ型の投資信託に勝っていると言われています。
(参照:モーニングスター「国内株式・大型ブレンド」に属するアクティブファンドのサクセスレート)
アクティブ型で、優秀な商品は3割ぐらいと言われています。つまり、アクティブ型の投資信託を選ぶ場合は、見極めが必要です。
下記のファンドは約25年間実績のあるアクティブ型ファンドの事例です。25年平均インデックス型が7.8%(グラフ灰色)に対して、アクティブ型が14.2%(グラフ茶色)と大幅に上回っています。
もちろん、将来この成績を約束するわけではありませんが、これだけの実績があれば、多少高いコストを払っても、このファンドを選択したいと思う方も多いでしょう。
つみたてNISAはこのようなファンドが基本的に対象外なので、将来的に投資により詳しくなり、このようなファンドを選択したくなったら、NISAに切り替えるのも良いでしょう。
つみたてNISA口座開設方法
◆証券口座を持っていない方
つみたてNISAを利用する場合は、証券会社で口座開設が必要です。通常の証券口座の開設も必要です。お勧めの証券会社は下記の通りです。
〈お勧め証券会社〉
・SBI証券(174本 ※2021年4月現在)
・楽天証券(172本 ※2021年4月現在)
・IFAを通して加入(手続きや商品の相談可能)
〈NISA口座・つみたてNISA口座開設に必要な書類〉
・NISA口座開設届出書
・マイナンバー
・本人確認書類(運転免許証、個人番号カード等)
〈つみたてNISA口座開設の流れ〉
※上図③に関して 2019年1月より、税務署の申請結果を待たずに取引ができるようになりました。ただし、他の金融機関で口座がある場合は課税口座扱いとなります。 |
◆証券口座(NISA口座をお持ちの方)
既に証券会社でNISA口座をお持ちの方は、「非課税口座異動届出書(勘定変更用)」を提出することで済みます。ただし、今年度、既に現行NISAで購入している場合は、変更ができません。
まとめ
つみたてNISAについて解説してきましたが、資産運用が初めての方はまずはやってみて、経験する事が大事だと思います。まずは、つみたてNISAでオーソドックスな運用を始めて、少しずつ投資に興味を持ってもらいたいと思います。
また、始めたら、より知識が深まるように、様々な金融商品について、勉強して知識を高めていく事をお勧めします。