
「NISAの非課税期間は5年だけど、5年後はどうするのがお得なの?」
「NISA終了後の5年後に手続きをしないといけないの?」
「ロールオーバーって何?」
など、NISAを始めた方は気になってくる問題です。
NISA(少額投資非課税制度)は、非課税の期間が5年間なので、5年間はメリットがあるのはわかっているけど、非課税期間終了後(5年後)の選択肢についてはよくわからない・・・・という方が多いと思います。
2014年からスタートしたNISAですが、2014年に購入した分は、今年(2018年)の年末に非課税期間が終了します。つまり、はじめて「5年後」がやってきます。
5年後の選択肢は、
①非課税期間終了前に売却
②課税口座に移管
③ロールオーバー
と3つの選択肢があるのですが、何もしないと②の課税口座に移管されてしまいます。
さらに、2017年の税制改正で、③のロールオーバーに関してルールが変わり、NISAのメリットが拡大しました。
この記事では、NISA5年後の選択肢を理解するとともに、自分にとって良い方法を選択するにはどうすればよいか、また、ロールオーバーに関するルール変更を最大限活用するためにはどうすればよいかも解説します。
さらに、2018年購入分は5年後にロールオーバーが選択できる最後の年です。
今年、2018年購入分でロールオーバーのメリットを活かすためには、どのような商品を購入するべきか?
5年後にロールオーバーが選択できない2019年以降の購入分に関してはどのような商品を購入するべきか?
も考えていきます。
NISAを始めている方も、これから始める方も是非参考にしてみてください。
目次
- 1 NISAの非課税期間終了後(5年後)の気になるQ&A
- Q1 5年後(満了時)の選択肢はなんですか?
- Q2 5年後に手続きを何もしないとどうなりますか?
- Q3 ロールオーバーとはなんですか?
- Q4 5年後にロールオーバーするとどうなりますか?
- Q5 課税口座って何ですか?
- Q6 5年後に通知は来ますか?
- Q7 5年後に必要な手続きはなんですか?
- Q8 5年後につみたてNISAに移管できませんか?
- Q9 NISA口座で保有している投資信託等の時価が120万円を超えていた場合、ロールオーバーはできますか?
- Q10 金融機関変更をして現在はB証券でNISA口座を設定。 過去にA証券のNISA口座で買った商品を5年後に、B証券でロールオーバーできますか?
- Q11 ジュニアNISAでも非課税期間が満了した場合は、ロールオーバーができますか?
- 2 NISAの5年後の選択肢は、①期間満了前に売却、②課税口座に移管、③ロールオーバー の3つ。
- 3 税制改正でロールオーバーのメリットが向上し、非課税期間が実質10年に(2018年購入分まで)
- 4 5年後のNISA終了後の対応
- 5 FPの私がお勧めする、2018年以降のNISAで買うべき商品は?
- 6 まとめ
1 NISAの非課税期間終了後(5年後)の気になるQ&A
NISAは2014年にスタートしました。つまり、2014年にNISA口座で購入した商品の非課税期間(5年)が、2018年末で終わります。終了後の対応についてまとめました。
Q1 5年後(満了時)の選択肢はなんですか?
A:選択肢は3つあります。
1 満了前に売却・・・5年後の年末を迎える前に売却手続きが必要です。
2 課税口座(一般口座)に移管・・・通常何もしないと自動的にこちらになります。
3 ロールオーバー・・・手続きが必要です。※ただしロールオーバー可能なのは2018年購入分まで
Q2 5年後に手続きを何もしないとどうなりますか?
A:何もしないと、課税口座に移管されます。
NISA口座で保有し続ける場合はロールオーバーの手続きが必要です。
Q3 ロールオーバーとはなんですか?
A:NISA口座を開設し資産運用を始めて、5年の非課税期間が終わった後、翌年の非課税枠を利用してそのままNISA口座内で保有し続けることが可能です。このことをロールオーバーといいます。
Q4 5年後にロールオーバーするとどうなりますか?
A:非課税のまま、もう5年間運用を続けることができます。
ただし、ロールオーバーしてしまうと、その年にNISA口座で追加購入できる金額は、120万円からロールオーバーした金額を引いた差額となります。
120万円を超える金額でロールオーバーした場合はその年は追加購入できません。
Q5 課税口座って何ですか?
A:非課税の取引ができるNISA口座に対して、通常の取引をする口座のことを課税口座といいます。NISAの取引をする際にNISA口座とともに課税口座も開設します。
課税口座は、一般口座か特定口座を選ぶ必要がありますが、詳細は、この記事の2章の囲み記事をお読みください。
Q6 5年後に通知は来ますか?
A:今のところきまっておりません。(2018年5月現在)
NISAは2014年にスタートしたので、2018年12月末が初めてロールオーバーが行われます。
調査の結果、具体的な手続きの方法、通知の方法、タイミング等は2018年5月現在、決まっている金融機関はありませんでした。
どの金融機関も2018年12月までには具体的な方法を案内する予定となっています。
調査先:楽天証券、SBI証券、エース証券、PWM日本証券、野村證券
Q7 5年後に必要な手続きはなんですか?
A:ロールオーバーする場合は手続きが必要です。
具体的な手続きの方法に関しては、2018年12月末までに案内する予定となっています。
Q8 5年後につみたてNISAに移管できませんか?
A:つみたてNISAには移管できません。
また、ロールオーバーする場合には、つみたてNISA口座ではなく、NISA口座が必要となりますので、つみたてNISA口座をお持ちの方は、NISA口座に変更しておく必要があります。
Q9 NISA口座で保有している投資信託等の時価が120万円を超えていた場合、ロールオーバーはできますか?
A:時価が非課税枠である120万円を超えていてもロールオーバーすることができます。
Q10 金融機関変更をして現在はB証券でNISA口座を設定。 過去にA証券のNISA口座で買った商品を5年後に、B証券でロールオーバーできますか?
A:できません。
A証券(同じ証券会社)でロールオーバーする年のNISA口座が設定されている必要があります。
また、一般口座(課税口座)での保有商品は、他の金融機関に移管できるケースがありますが、NISA口座での保有商品は他の金融機関への移管ができません。
Q11 ジュニアNISAでも非課税期間が満了した場合は、ロールオーバーができますか?
A:NISAと同様、ジュニアNISAでも非課税期間が満了した場合は、ロールオーバーできます。
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2 NISAの5年後の選択肢は、①期間満了前に売却、②課税口座に移管、③ロールオーバー の3つ。
NISA口座で運用をして①の売却をしなかった場合、下の図のように6年目以降は②と③の2つの選択となります。
2-1 お金が必要な場合は、満了前に売却しよう。
何かを購入するためにお金が必要な場合、また、つみたてNISAなど他の制度に変更する場合は売却が必要です。
ただし、そのまま資産運用を続けたい場合は、売却せずに②課税口座に移管するか、③ロールオーバーをします。
2-1-1 必要な手続き
通常の売却手続き。
2-1-2 売却したあとはどうなる?
売却代金は、欲しいものなどの購入資金に充てる場合は銀行口座に払い出します。
また、つみたてNISAなどに他の制度に移管する場合などは、MRF(※1)にしておきます。
※1 MRF(マネーリザーブファンド)とは?
MRF(マネーリザーブファンド)は「証券口座の預金」という理解で大丈夫です。
MRFは普通預金に近い商品です。1円以上1円単位で購入及び即時解約が可能で、購入手数料は不要です。プール資金として利用します。
2-2 違う商品をNISA口座で買いたい場合は、「課税口座に移管」しよう。
通常手続きを何もしないと課税口座(一般口座又は特定口座)(※2)に移管されます。
課税口座に移管した方がよいのは、現在、NISA口座で保有している商品と違う商品(違う投資信託など)をNISA口座で購入したい場合 です。
例えば、下の図のように、「当初NISA口座でAファンドを購入したが、追加でBファンドを購入したい」ケースを考えます。
NISA口座では利益は非課税になりますから、債券型のAファンドよりも、株式型のBファンドの方が値上がりの期待があるのであれば、Aファンドは課税口座に移管し、Bファンドを新たにNISA口座で買い付けた方が、最終的に払う税金が少なくなります。
上のケースで、Aファンドをロールオーバーし、Bファンドを課税口座で購入した場合は、Bファンドの利益が30万円だとすると、税金は約6万円となります。
※2 証券総合口座の種類。
通常、株式や投資信託をNISA口座ではなく課税口座で購入する場合、事務手続きが簡単な、「B:特定口座(源泉あり)」を選択します。
「B:特定口座(源泉あり)」にすれば、年間損益計算書を金融機関が作成してくれる他、納税もしてくれるので、何もしなくてよく便利です。
※ただし、損失がある場合や、利益が小さい場合は、他の方法を選択した方が有利な場合もあります。
「A:一般口座」を選択すると、年間損益計算書、納税手続き等も自分で行う必要があります。
「C:特定口座(源泉なし)」を選択すると、年間損益計算書は金融機関が作成してくれますが、納税手続きは自分で行う必要があります。
2-2-1 必要な手続き
手続きは不要です。 自動で課税口座に移管されます。
2-2-2 課税口座に移管後はどうなる?
移管後は売却するまでずっと保有することが可能です。
売却時には利益に対して税金がかかります。(特定口座を設定している場合は利益の20.315%)
利益は、買付時と売却時の差額ではなく、課税口座に移管した時と売却時の差額となります。
図の例は、価額が100万円を買付(NISA口座)、150万円の時に移管し、200万円で売却(課税口座)した場合です。
投資全体の本来の利益は、100万円→200万円となったので、100万円です。
しかし、5年間NISA口座で運用していたため、
実際の利益の計算は、利益=売却価額―取得価額=50万円 となります。
※最初の買付価額100万円ではなく、移管時の150万円が取得価額となります。
したがって、50万円の利益に対して税金を支払えばよいということになります。
2-3 そのまま運用し続けるなら非課税が継続できる「ロールオーバー」が有利(2018年購入分まで)
NISA口座を開設し資産運用を始めて、5年の非課税期間が終わった後、翌年の非課税枠を利用してそのままNISA口座内で保有し続けることが可能です。
このことをロールオーバーといいます。非課税期間終了後の金額が120万円を超えていても全額ロールオーバー可能になりました。(2017年税制改正)
※ロールオーバーが可能なのは、2018年購入分までです。
(現在、NISAは2023年までの制度となっており、2023年がロールオーバー最後の年となります。)
参考 NISA制度のイメージ
・口座開設は2023年まで
・年間投資額の上限は120万円。
2-3-1 必要な手続き
具体的な手続きの方法に関しては、2018年12月末までに案内する予定となっています。
2-3-2 ロールオーバーした後はどうなる?
引き続きもう5年間NISA口座で運用が可能です 。
その後、売却をしなければ、さらに5年後にはロールオーバーはできませんので、課税口座に移管されます。
3 税制改正でロールオーバーのメリットが向上し、非課税期間が実質10年に(2018年購入分まで)
2017年に、ロールオーバーできる金額の上限が撤廃されました。
これにより2つのメリットが生まれました。
3-1 非課税のまま長期で運用できる金額が増えた。
当初、ロールオーバーは、翌年の非課税枠の範囲(2018年だと120万円)に限定されていました。
したがって、下の図のように、100万円→150万円になった場合は、ロールオーバーは120万円分しかできず、残りの30万円分は、課税(一般)口座に移行するか売却して受け取るしかありませんでした。
しかし、現在は、150万円が全額ロールオーバー可能となりました。
これにより、非課税のまま運用できる金額が増えました。
3-2 10年間の長期投資が可能となり、積極的な運用も選択しやすくなりました。
NISAは非課税の期間が、当初の5年間から実質的に10年間にかわりました。
これは、今までは、5年以内に利益がでないと、NISAのメリットはなかったのですが、現在は、10年以内に利益を出せば、NISAのメリットを享受できるということです。
その結果、NISAは、実質10年間の制度と考えることができるようになったので、積極的(ハイリスクハイリターン)な商品選択もしやすくなりました。
なぜなら、資産運用は期間が5年間なのか10年間なのかでは難しさが大きく変わってくるからです。
資産運用は、長期投資の方がよい結果を得ることができる可能性は高くなります。
特に最もオーソドックスな資産運用方法である、分散投資の効果は長期投資(10年程度)がよい結果を出す一つの目安となります。
ですので、5年間ではなく10年間保有できるということは、長期投資により、資産運用の結果がプラスになる可能性が高くなり、結果的にNISA口座を選択したメリットを享受できます。(利益が非課税になるメリット)
3-3 2018年はロールオーバーを前提に購入できる最後の年となります。
NISAでロールオーバーできるのは2018年購入分までです。NISAは2023年までの制度なので、2019年購入分は、終了時2024年となるためロールオーバーができません。(5年しか保有ができません)
つまり、2018年購入分は、ロールオーバーが可能な最後の年となります。
ジュニアのNISAロールオーバー
ジュニアNISAもロールオーバーの上限が撤廃されました。NISAのロールオーバー可能なのは、は2018年購入分までですが、ジュニアNISAに関しては、お子さんが20歳になるまでロールオーバーが可能です。
0歳のお子さん名義でジュニアNISAの口座開設した場合は、0歳時に購入した分(上限80万円/年)は、20歳になるまでロールオーバーが可能となり、実質20年間非課税になります。
4 5年後のNISA終了後の対応
4-1 2018年購入分まではロールオーバー
2018年購入分までは、ロールオーバーする方がメリットがあります。
NISAは損益通算(※3)ができないために、運用の結果、損をしている場合はNISA口座で購入しない方がよかった、ということになってしまいます。(課税口座の場合は損益通算ができる)
ですので、今後購入した商品が下がる可能性が高い場合は、NISA口座で保有するよりも課税口座で保有した方がよいのです。
しかし、そもそも、価額が下がることを想定して資産運用をすることは考えにくいので、「結果としてNISA口座にしなければよかった」ということはあるものの、価額が上がることを想定して資産運用をするのであれば、NISA口座で保有した方が非課税のメリットを受けられます。
※3)損益通算とは、
通常、資産運用で利益が出た場合は、税金を納める必要があります。
一方、資産運用で損が出たときは、損をしている口座と他の資産運用をしている口座の利益と相殺して、全体の利益を減らし、結果的に納める税金を少なくすることができます。これが「損益通算」です。
つまり、口座間での「損」と「利益」を「通算」して節税につなげられる、ということです。
ただし、NISA口座は損益通算ができません。
4-2 2019年以降購入分は課税口座に移管される。(対応不要)
ロールオーバーの選択はできませんので、課税口座に移管されます。
5 FPの私がお勧めする、2018年以降のNISAで買うべき商品は?
ロールオーバーの上限が撤廃されたことにより、NISA口座で購入するべき商品の考え方も変わってきました。
ただし、ロールオーバーが可能で10年保有できるのは2018年購入分までですので、2018年購入分とそれ以降では考え方が変わってきます。
5-1 2018年までは、長期投資可能で株式中心で積極運用を
2018年までの購入分は、ロールオーバーにより10年間非課税での投資が可能です。
10年間の長期で運用ができるのであれば、株式を中心としたハイリスクハイリターンの運用を考えていきたいです。
具体的には、分散効果も考え「世界株式に投資する投資信託」がよいでしょう。
下図のように、先進国の株式は長期的には右肩上がりとなりますし、10年の投資期間があれば変動も吸収できると考えます。
(出典:MSCI)
長期投資可能な場合のファンドの選び方はこちらの記事も参考にしてみてください。 |
5-2 2019年以降は、中短期となるので毎年検討することが必要
2019年以降の購入分は、5年間の投資となりますので、慎重な商品選択が必要と考えます。
変動の幅を抑えるべく、株式中心ではなく債券等へも分散しながら資産運用をすることも考える必要があります。
経済状況や金利状況を確認しながら、NISA口座による商品購入をせずに保険など他の商品を検討すること、購入金額を下げることも含めて毎年検討する必要があると考えます。
6 まとめ
以上が、NISAのいわゆる“5年後”の対応方法です。
2017年の税制改正で、NISA口座のロールオーバーできる金額の条件が撤廃されたことにより、原則ロールオーバーにメリットがあると思われますので、NISA口座で購入し5年目を迎えた方は年末までに手続きが必要となります。
また、2018年は、購入した商品が5年後にロールオーバーが可能な最後の年となりますので、このメリットをぜひ活かしたいものです。
現在、NISA口座開設には1カ月程度の期間が必要となりますので、NISA口座未開設の方はお早目の手続きをお勧めします。
さらに、NISAは資産運用の利益が出て初めてメリットのある制度です。
利益を出すためには投資信託等の購入商品選びが重要となりますが、どう選んでよいかわからない方や、選び方を知りたい方は、セミナーで勉強したり、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをお勧めします。